とお考えの人もいるのではないでしょうか。
高齢になると身体機能や認知機能が低下し、車やバイクの運転の際、ヒヤリとする場面が増えます。
最悪の場合、大きな交通事故に発展するケースが増えており、高齢者の交通事故は社会問題となっています。
そのため、家族の勧めによって自主返納する高齢者が令和5年の1年間で約38万人いることが判明しました。
一方で、車が無いと生活が不便になることやライフスタイルなどの理由によって、免許を返納しない高齢者も多いことも分かっており、高齢の親を抱える人にとって大きな悩みの一つとなっています。
しかし、説得の方法次第は免許返納に向かって進みだすきっかけとなるでしょう。
今回の記事では、以下の内容について解説します。
- 高齢者の免許返納の実態
- 免許返納を考えるべき高齢者の特徴
- 高齢者が免許返納しない理由
- 高齢者に免許返納をしてもらう説得方法
- 免許を返納する方法
高齢の親が免許返納に応じてくれないと悩んでいる人は、ぜひ最後までご覧ください。
高齢者の免許返納の実態
このように、高齢の親の免許返納を考える際、高齢者の免許返納の実態について気になるのではないでしょうか。
高齢者の免許返納の実態は以下の3つとなります。
1年間で免許返納をした高齢者は約38万人警察庁
警察庁「運転免許の申請取消(自主返納)件数と運転経歴証明書交付件数の推移」によると、令和5年の1年間で、約38万人の高齢者が免許を返納したと公表しています。
しかし、令和元年に60万人の高齢者が免許を返納しているため、免許返納の全体数で見ると大幅に減少しています。
同調査の年齢別の免許返納数を見ると75歳以上の高齢者が多いことから、今後も高齢化に伴い、75歳以上の高齢者の免許返納数は上昇すると考えられるでしょう。
免許返納をする高齢者の年齢は65歳以上80歳未満が多い
警察庁「令和5年度運転免許統計」によると、65歳から80歳未満の高齢者の免許返納数が高いことが分かっています。
高齢者になると免許更新時に「高齢者講習」として、以下のカリキュラムを受けなければなりません。
- 運転適性検査
- 実車教習
- 座学
さらに75歳以上になると認知機能検査も必須となり、場合によっては病院へ受診する必要があるなど、手続きは複雑化しています。
このような免許更新の煩雑さに併せて、身体機能や運転技術の衰えを自覚した高齢者が免許更新のタイミングで返納を決める場合が多いと考えられます。
免許返納を決めた最も多い理由は「家族に勧められた」
返納をした高齢者の内、返納を決めた最も多い理由が「家族等に勧められた」です。
警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」によると、自主返納をした高齢者のうち3割以上の人が「家族に勧められた」という理由で返納したことが判明しています。
運転する高齢者自身は普段と変わらず運転していると思いがちですが、第三者視点で見ると、事故につながるような行動が見られがちです。
一方で、身体機能や運転技術の衰えを自覚し、運転に対して危機感を覚える人もいますが、運転できないと生活に困るため返納に踏み切れない高齢者もいると思われます。
そのため、家族からの勧めや指摘を受けることが決め手となり、免許返納を決めた高齢者が多いと考えられます。
免許返納を考えるべき高齢者の6つの特徴
高齢になると、若い時より身体機能や認知機能の低下によって、運転技術が衰えてきます。
運転技術が衰えると、さまざまな運転時のミスが目立つようになり、最悪の場合、命につながる重大な交通事故に発展するでしょう。
高齢者の事故を未然に防ぐために、まずは日頃の運転から以下の6つの特徴がないか確認しましょう。
- 左右のウインカーを間違って出したり、ウインカーを出し忘れたりする
- 歩行者や障害物、他の車に注意が向かないことがある
- カーブをスムーズに曲がれないことがある
- 車庫入れのとき、塀や壁をこすることが増えた
- 信号や標識を無視して通行することがある
- 右左折時に、歩行者や対向車などをよく見落とすようになった
引用:政府広報「運転が不安になってきたシニアドライバーやそのご家族へ 運転免許証の「自主返納」について考えてみませんか?」
このような特徴が見られる頻度が高い場合、免許返納を考え始めるタイミングと思われます。
高齢者の危険運転を未然に防ぐためには、上記の特徴に該当しないかを確認することも必要です。
高齢者が免許返納をしない理由
免許を返納する高齢者がいる一方、さまざまな理由で免許を返納しない高齢者もいます。
なぜ免許を返納しないのか、その理由が気になる人もいるのではないでしょうか。
高齢者が免許を返納しない大きな理由は以下のようになります。
最も多い理由は「車がないと生活が不便だから」
高齢者が免許を返納しない最も多い理由は「車が無いと不便だから」です。
警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」によると、免許の自主返納をためらう最も多い理由が「車が無いと不便なこと」だった事を公表しています。
交通網が発達した都会での生活であれば、車やバイクなどの移動手段が無くても生活に支障はないと思われます。
しかし、都会から離れた地方や田舎での生活になると、車やバイクといった移動手段がなければ、病院受診や買い物などの外出の際、非常に不便さを感じます。
そのため、生活する場所によっては、移動手段が無いと不便になるという理由で免許を返納しない高齢者が多いと考えられます。
「車の運転の楽しみが無くなる」という理由も多い
高齢者が免許を返納しない理由の中には「車の運転の楽しみが無くなる」という理由も多いです。
警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」によると、運転継続者・返納者合わせて「車の運転の楽しみが無くなる」という理由で免許返納をためらう人が多いことも分かりました。
高齢者の中には車やバイクの運転を趣味にしてきた人や旅行の移動手段として楽しい時間を過ごしてきた人がいます。
そのため、免許返納をすると運転の楽しみや外出の楽しみが無くなる不安を理由に免許を返納しない高齢者も多いと考えられます。
反対にためらう理由がなく免許返納をする高齢者も多い
免許を返納しない高齢者や返納をためらう高齢者がいる一方、ためらう理由がないため免許返納をする高齢者も多いです。
警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」によると、自主返納した人の内、半数近くの人がためらう理由が無かったから返納した高齢者がいることが公表されています。
例えば交通網が整っている都会で生活している場合、運転ができなくても生活には困らないと思う高齢者が多いとおもわれます。
また、高齢者による交通事故のニュースを目にする機会が増えたことにより、同じような事故を起こしたくないという思いから、免許返納を考え始める高齢者もいます。
こうした背景によって、ためらう事なく免許を返納する高齢者が多いと考えられます。
高齢者に免許返納をしてもらう5つの説得方法
高齢の親に免許を返納してもらうための説得方法について悩む人もいるのではないでしょうか。
高齢者に免許を返納してもらうための説得方法は以下の5つとなります。
家族や親戚が協力して説得する
高齢者に免許を返納してもらうためには、家族や親戚が協力して説得する方法があります。
例えば、自身の運転技術の衰えに気づいているものの、事故を起こすリスクや運転ができなくなることへの不安を抱えた高齢者もいます。
そのような高齢者に、家族・親戚から頭ごなしに返納を説得すると「誰も自分の気持ちに気づいてくれない。」と思い、素直に耳を貸さなくなり説得に応じないでしょう。
そのため、まずは家族・親戚の中で普段からよく話をする人に協力してもらい、説得してもらいましょう。
また、説得する際、高齢者が抱える運転技術の衰えや免許返納への不安など抱えている思いに寄り添いながら話を進めましょう。
実際に免許返納を話した家族の方から以下のような話を聞く事ができました。
このように、頭ごなしに説得するのではなく、家族・親戚が協力しながら高齢者に寄り添って話を進めると、高齢者自身も本音を打ち明けてくれるため、免許返納について説得しやすくなるでしょう。
経験者や専門家から説得してもらう
経験者や専門家から説得してもらう方法も効果的です。
家族の説得に応じない場合、免許返納の経験者や医師などの専門家のアドバイスによって返納に応じる場合もあるからです。
免許を返納しない高齢者の中には「自分はちゃんと運転できるから大丈夫」と考える高齢者も少なくありません。
このような高齢者へ家族から説得をしても、返納に応じない場合があります。
そこで、免許返納の経験者からアドバイスをしてもらうことにより、免許返納のメリットや返納後の生活がイメージしやすくなります。
また、かかりつけの医師から身体機能や認知機能について評価をし、評結果に基づき免許返納のアドバイスを受けることにより、自身の衰えを自覚して免許返納を考えるようになるでしょう。
実際に医師から免許返納についてアドバイスを受けた方から以下のような話を聞くことができました。
これから免許返納を説得しようと考えている場合、経験者や専門家からの協力を得られるように関係作りや準備をしましょう。
免許返納のメリットを伝える
免許返納によってさまざまなメリットがあると伝えることも説得する上で必要な方法です。
具体的な免許返納のメリットは以下のようになります。
- 公共交通機関の運賃の割引
- 運動不足の解消
実際に免許を返納した高齢者から以下のような話を聞く事がありました。
このような免許返納のメリットによって、どのようないい変化を得られるのか具体的に伝えましょう。
一気に説得しようとせず話し合う
高齢者へ免許返納を説得する際、つい一気に説得してしまいがちです。
しかし、一気に説得しようとせず、話し合うように免許返納を促しましょう。
場合によっては、説得どころか話に耳を貸さなくなり、免許返納が進まなくなるからです。
免許を返納しない高齢者の中には、自身の運転技術の衰えを自覚していないプライドの高い人もいます。
そのような人に正論で畳み掛けながら説得すると、高齢者からすると現実を突きつけられ、プライドを傷つけられたような気持ちになり、話に耳を貸さなくなります。
そのため、一気に説得しようとせずに、一緒に考えるスタンスをとりながら免許返納に関する具体的なデータなどを織り交ぜて話を進めましょう。
時間がかかるかもしれませんが、話し合うように説得することによって、高齢者自身から免許返納について考えるきっかけとなり、結果的に免許返納につながるでしょう。
適正チェックを受ける
高齢者に免許返納を促す場合、適正チェックを受ける方法も免許返納を促す意味では効果的です。
具体的には以下のような適正チェックを受けることが可能です。
- 病院での認知機能検査
- 高齢者講習における運転適正検査
- 「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」※でのチェック
実際に適正チェックを受けた高齢者から以下のような話を聞くことができました。
このような適正チェックを受けることによって自身の運転技術の衰えを自覚し、免許返納に応じる可能性があるでしょう。
免許を返納する方法
説得の上、高齢の親が免許返納に納得したけど、免許返納の方法が分からないため困っている人は多いのではないでしょうか。
免許返納の方法は以下のようになります。
免許返納の手続きは警察署か運転免許センターで行う
免許を返納する場合、警察署か運転免許センターで手続きを行いましょう。
返納の手続きは本人による申請と代理人による申請が可能です。
しかし、代理人申請の場合は代理人の範囲が限定されており、申請時には委任状も必要となります。
そして、免許返納は誰でもできる訳ではなく、以下の内容に該当する人は返納手続きができません。
- 運転免許証の有効期限が切れている人
- 免許の取り消し基準に該当する人
- 免許停止の処分を受けている人、または免許停止処分の基準に該当する人
- 初心者期間(免許取得から1年間)に再試験の必要がある行為をした人
申請方法や返納できない人の条件については、お住まいの住所を管轄する警察署や自治体のホームページを参考にしましょう。
免許返納に必要なもの
免許返納に必要なものには、免許返納のみ申請する場合と運転経歴証明書を同時に申請する場合によって内容に違いがあります。
それぞれ必要なものを確認しながら準備しましょう。
免許返納のみ申請する場合
- 運転免許証
- 申請書
- 氏名・住所・生年月日などが分かる本人確認書類
- 印鑑
免許返納と運転経歴証明書を同時に申請する場合
- 運転免許証
- 申請用証明写真
- 手数料
- 氏名・住所・生年月日などが分かる本人確認書類
- 印鑑
免許返納と同時に運転経歴証明書の申請がおすすめ
運転経歴証明書を申請すると、公的な身分証明書として利用できます。
さらに、各自治体で提供されている返納者向けのさまざまな特典を受けることが可能です。
運転経歴証明書を申請した高齢者から以下のような話を聞くことができました。
しかし、以下の要件に該当する人は申請できません。
- 運転免許証の有効期間から5年以上経過している
- 行政処分の対象となっている
そのため、運転経歴証明書を申請する際には事前に確認しましょう。
免許返納によってさまざまな特典を受けられる
免許返納によって、さまざまな特典を受けることができます。
特典の内容はお住まいの自治体によって違いがありますが、大まかには以下のような特典を受けられます。
- 公共交通機関やタクシーの割引・利用券の交付
- スーパーや百貨店などの配送料割引
- 銀行の預金金利が高くなる
- 飲食店での食事代の割引
実際に、免許返納によって特典を受けることができた高齢者から以下のような話を聞く事ができました。
免許返納の特典を受けることにより、返納後の生活の不安を少しでも解消することにつながるでしょう。
まとめ
今回は高齢者の免許返納について解説しました。
高齢者は身体機能や認知機能の低下に伴い、運転技術の衰えが見られるようになり、運転中のミスが増えるようになるでしょう。
運転中のミスが頻発すると、命につながるような大きな事故を引き起こす可能性が高くなります。
事故を未然に防ぐ意味でも免許返納は効果的な方法と言えるでしょう。
しかし、免許返納は今後の生活を大きく変える決断となるため、その不安は大きいと思われます。
そのため、ただ返納に向けて説得するより、不安な気持ちに寄り添いつつ、家族などの周囲の人たちが協力しながら一緒に不安を解消できるように考えることは非常に大事なこととなるでしょう。