このように毎日、同じ話を繰り返す家族に疲れ果ててしまうことはありませんか?
実は、これには理由があります。
最後までお読みいただき、生活に取り入れていただけたら幸いです。
それでは、ひとつずつ解説していきます。
認知症高齢者が同じ話を繰り返す理由とは
同じ話を繰り返すのは、次の4つの理由が考えられます。
- 記憶障害からくるもの
- 保続ができないため
- 見当識障害によるもの
- 精神的な要因からくるもの
記憶障害からくるもの
認知症になると記憶するということができなくなり、忘れてしまうため、同じ話を繰り返してしまいます。
この症状を短期記憶障害といいます。
認知症が進行するにつれて、そのスパンは短くなります。
保続ができないため
脳の神経細胞の変性によって思考の切り替えができなくなることを保続と言います。
そのため、名前を聞かれた後に年齢を聞かれても名前を連呼してしまうという現象が起こります。
見当識障害によるもの
見当識障害とは、時間、場所、人物による認識が低下した状態を指します。
次の順で進行していきます。
- 時間がわからなくなる
- 場所がわからなくなる
- 人物の顔が認識できなくなる
精神的な要因からくるもの
認知症になると物事をすぐに忘れてしまうため、常に不安な気持ちになっています。
安心したくて同じことを繰り返し尋ねてしまいます。
認知症高齢者が同じ話を繰り返す内容とは?
認知症高齢者の方が繰り返し話す内容にはいくつか共通点があります。
その内容についてみていきましょう。
- 気になっていること、不安に思っていることを確認したい
- 人生において印象に残っている話を聞いて欲しい
気になっていること、不安に思っていることを確認したい
- 家族は自分がここにいることを知っているか?
- お金の支払いはどうなっているか?
- 〇〇が見当たらない。誰かが持って行ったのかもしれない。
不安は多岐に渡ります。
安心できる言葉かけを行ったり、困っている気持ちを受け止め、一緒に探すなどの対処をしましょう。
何度かやり取りをした後、収まらない場合は、対応する人を変えたり、他のことに興味が移るように工夫します。
人生において印象に残っている話を聞いて欲しい
人は誰しも誰かに認められたいという承認欲求を持っています。
自分が仕事で最も輝いていた時代のこと、あるいは戦争に行って苦労したこと、家族と死別して悲しかったことなど、聞いて欲しい印象深いエピソードを持っています。
同じ話を繰り返すのは、そのように誰かに聞いて欲しい強烈に心に残っている記憶です。
頑張ったこと、乗り越えたことを認めて欲しいのです。
誰かに聞いてもらうことで、認知症の方の承認欲求は満たされ、感情を開放することができます。
認知症 何度も同じ話を繰返す対処方法
- 聞き流す技術を身に付ける
- 話を展開させる
- 興味がある方向に意識を導く
聞き流す技術を身に付ける
要所要所であいづちを打ち、オウム返しをする。これは基本的なコミュニケーションテクニックです。
これにより、認知症の方は自分の話を聞いてもらっている、受け入れられているという気持になります。
話を展開させる
ペットの猫の話を繰り返す場合、猫の名前や種類を聞いてみたり、他のエピソードを聞いてみる。
聞き役は、認知症の方の新しい情報を知ることができます。また、認知症の方は、自分の話を聞いてもらっている満足感や承認欲求が満たされることになるでしょう。
興味がある方向に意識を導く
日課である新聞をお渡しする。あるいは、そろそろ「お相撲が始まりますよ」とテレビの方へ誘導する。
「お食事ですよ」と、食堂へお連れするなどして場面の転換を図る。
違う興味、関心がある方に気持が向くことで、同じ話を止めて、気分が切り替わります。
やってはいけない対処方法
認知症高齢者に対して、つい、やってしまいがちで、実は気を付けなければならない対処方法があります。
その代表的なものについてお話します。
- いい加減な返事をしたり、無視をする。
- 「何回も聞きましたよ」と、話の腰を折る。
- 「何回も危ないと注意しましたよね!」と𠮟りつける。
いずれも悲しい気持ちになり、心の孤独を感じずにはいられないでしょう。
認知症の方の心はとても繊細で、この「悲しい気持ち」や「寂しい気持ち」などの感情は、いつまでも残ります。
心の孤独感が増えることで、認知症の進行を早めてしまう可能性が大いにあります。
やってはいけない対処法を理解し、実行するだけでも認知症の進行を緩やかにする効果があるのです。
認知症 何度も同じ話を繰返す対処方法の実例
1ユニット10人の方が一緒に生活されていて、全員が何かしらの認知症を患っておられます。その方々の中で、話好きな方と聞き上手な方を、相性を見極めてお話ができる環境作りをします。
聞き上手な方も認知症がおありですので、昨日聞いた話であっても初めて聞いたことのように聞いて下さいます。お互いににこやかにお話されていることも多く、一石二鳥ですね。
このように「忘れる」ということを上手に「活用する」というのも方法のひとつです。
ただ注意していただきたいのは、特に聞き上手な方が、疲れきってはいないかな…と観察をすることです。
表情がくもっている場合には、スタッフが介入する必要があります。
認知症高齢者の相性を見極めるポイントは、まずは、共通点を見出すといいでしょう。例えば、
- 同い年、同じ干支である
- 同郷の生まれである
- 苗字、名前が同じである
- 好きな動物や食べ物がある
同じ話を繰り返す方に対して、聞き役の方を飽きさせない工夫が大切です。時々、スタッフが介入し、話題の方向を変えましょう。
このようにすることで、聞き役の方にもあいづちだけではなく、発言の場面がうまれます。その時に役立つのが、この共通点で盛り上げるという方法です。
数人で集うと、レクリエーションのようにもなり効果的です。ぜひ、試してみてください。
まとめ
人はご高齢になればなるほど、生きてきた年数分、辛かったこと、うれしかったこと、がんばったことなど様々なエピソードをお持ちです。
それを誰かに分かって欲しい、認めて欲しいのです。だから繰り返し話をします。
私たちはその気持ちを受け止め、上手に対処していかなければなりません。
年を重ねると、記憶力は少なからず低下していきます。それが年相応によるものか、病気によるものかで認知症か否かという診断がつきます。
現在、認知症高齢者は爆発的に増え続けています。超高齢化社会に突入した現在では、避けては通れない事実でもあります。
最後にお伝えしたいのは、認知症の方の心はとても繊細です。
悲しいことやうれしいことの印象深く、強い感情は残っていますし、覚えています。
そのことを心に止めておけば、どうすれば認知症の方の心を安らかにできるのか答えが見つかるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。