家族の介護が必要になったとき、多くの人が何らかの不安を感じるのではないでしょうか。
特に仕事をしている人にとっては、仕事を休むことによる収入面への不安を抱く方も多いはず。
介護休業給付金は、そのような仕事と介護を両立する人を支援する制度です。
本記事では、介護休業給付金の概要や要件、申請方法についてわかりやすく解説します。
介護休業給付金とは
まずはじめに、介護休業給付金の概要についてお話していきます。
介護休業給付金は、要介護状態にある家族の介護をするために介護休業を取得した場合に、給与の67%が支給される制度です。
対象家族1人につき通算93日まで取得することができ、3回までであれば分割で取得することもできます。
雇用保険の制度であるため、まずは雇用保険に加入している必要があります。加入しているかわからない人は給与明細を確認してみてください。雇用保険料が控除されていれば雇用保険に加入しています。
その上で後述の一定の条件を満たしていれば、介護休業給付金の申請・受給が可能となります。
正社員だけに限られた制度ではないので、アルバイトやパートタイマーでも雇用保険に加入していて一定の条件を満たしていれば対象となります。
- 休業開始時賃金日額の67%相当額が支給される
- 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得できる
支給対象となる介護休業
要介護状態とは
介護休業給付金の対象となる介護休業とは、病気やケガ、身体上または精神上の障害により、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態にある家族を介護するために取得する休業のことをいいます。
少しわかりづらいのですが、”2週間以上”というのは常時介護を必要とする状態についてのお話です。そのため、介護休業を取得する本人が、2週間以上介護に従事しなければならないわけではありません。介護休業の取得自体は2週間未満でも対象になります。
また、介護休業制度における要介護状態と介護保険制度の要介護認定基準は同じではありません。したがって、要介護認定を受けていない場合であっても介護休業の対象となる場合があります。
介護休業制度における要介護状態の判断基準は、歩行や食事の摂取等の項目ごとに、どれくらいできること・できないことがあるかで判断されます。
対象家族の範囲
対象となる家族の範囲は以下の通りです。
- 配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます)
- 父母(養父母を含みます)
- 子(養子を含みます)
- 配偶者の父母(養父母を含みます)
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
仮に介護を要する家族が複数いる場合は、それぞれの対象家族ごとに申請ができます。
反対に1人の介護を要する家族に対して、介護を行う家族が複数いる場合は、各々が要件を満たしていればそれぞれが申請・受給することができます。
介護が必要になる家族も、介護を行う家族も、どちらも1人とは限らないのでこの点は制度利用者の側に立った良いところだと思います。
また、以前は同居や扶養の要件があったのですが、今は改正されてなくなっていますので、例えば離れて暮らす家族の介護の場合なども対象となります。
- 対象家族が複数いる場合は、それぞれの対象家族ごとに申請・受給ができる
- 同一の対象家族について、複数の家族で介護を行う場合、それぞれが申請・受給できる
- 同居要件や扶養要件はない
受給要件
原則の要件
介護休業開始日前2年間に雇用保険の被保険者であった期間が12か月以上あることが原則的な要件となります。
※介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に、賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月を1か月とカウントします。※12か月ない場合であっても、当該期間中に病気等により給与の支払を受けることができなかった期間がある場合は、受給要件が緩和されて支給要件を満たす場合があります。
正社員などフルタイムで働いている方であればわかりやすいのですが、勤務日数が少ないパートタイマーの方などは要件を満たしているかが自分では判断しづらいです。
勘違いしやすいポイントとしては、介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間で11日以上の要件をみていくというところです。区切り方によって11日以上になったり未満になったりする場合は、会社や労働局に問い合わせて確実な答えを確認した方が安心ですね。
もう1つ気を付けてほしいことがあります。
介護休業給付金制度は、介護休業終了後に職場復帰することを前提とした制度であるということです。
つまり、介護休業を取得する時点で退職が決まっている場合や、復帰の意思がない場合は、介護休業給付金の支給対象とはなりません。これは育児休業給付金制度と同じですね。
有期雇用労働者の場合
有期雇用労働者(雇用契約期間の定めありの方)の場合は、上記の原則の要件に加えてもう1つ要件があります。
介護休業の開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約(契約が更新される場合は更新後のもの)の雇用契約期間が満了することが明らかでないことが必要です。
これは、原則の要件の最後で述べたように、職場復帰つまり休業後も雇用が継続することが前提とされている制度であるためといえるでしょう。
以前はもう1つ、同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていることという要件がありましたが、2022年4月の改正で撤廃されて要件が緩和されました。
ただし労使協定により、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は対象外とすることができるとされておりますので、会社によっては対象外となってしまう可能性があります。まだ入社1年未満の方は会社に確認しておきましょう。
支給申請手続き
介護休業給付金の申請手続きは、原則として事業主を経由して行いますので、会社がしてくれることとなります。介護休業の取得を検討している場合は、事前に会社に必要書類等を聞いておくと良いでしょう。
本人が希望する場合は、事業主経由ではなく本人が申請手続きを行うことも可能です。
申請のタイミングは休業を終えてからとなるため、休業期間中に受給することはできません。具体的な申請期間は、介護休業終了日の翌日から2カ月後の月の末日までの期間となります。
以下の流れようになります。
- 介護休業取得の申し出(休業開始日の2週間前まで)
- 介護休業取得(通算93日まで)
- 介護休業給付金申請(休業終了日翌日から2か月後の月の末日まで)
- 介護休業給付金受給(支給決定日から1週間程度で入金)
休業の申し出は、原則的には介護休業開始日の2週間前までに事業主に申し出ることとなっています。
会社によっては申し出時期や書類等を独自に設けている場合があるので確認しておきましょう。
どのくらいもらえる?
最後に、みなさんが最も気になるであろう給付額についてです。
介護休業給付金の給付額は、[休業開始時賃金日額×支給日数×67%]となります。
正確な金額は、申請時に提出する書類をもとに休業開始時賃金日額が確定されて計算されます。休業開始時賃金日額とは、原則として休業開始前6か月間の給与の総支給額の合計を180で割った額となります。
総支給額とは、いわゆる額面のことで、社会保険料や住民税等が控除される前の額です。(6か月の間に賞与の支給があったとしても賞与の額は含めません。)※給付額には上限(月347,127円)があります。
休業開始前6か月間の給与の総支給額を180で割るということは、出勤日数ではなく暦で算出するイメージとなります。暦で割ると休日も含めて算出することになるため、思ったよりも少ないと感じるかもしれません。
簡単な例:月給24万円の場合
イメージしやすいようにするため、給与は毎月定額であった(変動がなかった)こととしています。
休業開始時賃金日額
24万円×6か月÷180=8,000円
1日あたりの介護休業給付金給付額
8,000円×67%=5,360円
介護休業期間中に働いて賃金が支払われた場合、給付額が調整されて減額となったり、0円(支給対象外)となったりする場合があります。
まとめ
介護休業を取得する間は事業主に給与を支払う義務がないため、多くの会社では無給となっています。介護のために仕事を休んで、その分給与が減ってしまうのはつらいですよね。
育児休業給付金のように1年や2年といった長い期間受給することはできませんが、急に家族の介護が必要になったときに、当面の介護や、仕事と介護の両立体制を整える準備期間として十分に活用できるのではないでしょうか。
今回は介護休業給付金について取り上げましたが、家族の介護に関して利用できる制度は他にも色々あります。
仕事と介護の両立は、精神的にも体力的にも、そして経済的にも負担があります。少しでも負担を減らす方法があるのであれば、積極的に活用すべきです。
家族の介護はもちろん大切ですが、自分を犠牲にしてしまってはなりません。仕事を含めた自分の生活と両立できるよう、活用できるものは大いに活用してください。
家族の介護のため仕事を休まざるを得ない状況になったら、負担を少しでも減らすためにも介護休業給付金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。