動物とふれあうことで、癒し効果や認知症予防の効果があるとされる、「アニマルセラピー」を導入する介護施設が増えています。
月1回の交流イベントをはじめ、レクリエーションの一つとしてもを取り入れているほど。
ですが、利用者や家族の中には、アニマルセラピーについて不安を持たれている方もいらっしゃいます。
アニマルセラピーとはそもそも何か、どんな効果やメリットがあるのか、また注意点も一緒にご紹介していきます。
アニマルセラピーとは?
アニマルセラピーとは、動物とふれあうことで心身の健康を促進する活動のことです。
「アニマル(動物)」「セラピー(療法・治療)」を組み合わせた、実は日本で発祥したものです。
コンパニオンアニマル(伴侶動物)と呼ばれる犬や猫と触れ合うことで、心が穏やかになったり、かわいらしい動物とふれあうことで、いろいろな感情や関心を持つことで、QOL(生活の質)の向上にもつながります。
アニマルセラピーには、主に3種類あります。
- 動物介在活動(AAA):利用者のQOL向上を目的として、動物とふれあい楽しい時間を過ごす活動。
- 動物介在療法(AAT):医師や看護師などの医療従事者が、治療目的を設定した上で実施する補助療法。リハビリや認知症ケア、緩和ケアの一環として行われる。
- 動物介在教育(AAE):主に子どもを対象に、動物を通じて道徳観や人格的成長、学習意欲の向上を図る活動。
アニマルセラピーに適している動物は?
アニマルセラピーとして適している動物は、子どもから高齢者まで「安心して接することができる動物」が前提となる、犬や猫、ウサギ、モルモットなどの小動物が主に適しています。
他にも、「人間に危害を与えない」「アレルギーを起こしにくい」「毛が抜けにくい」「性格が人懐こい・穏やか」などの動物も適しています。
人見知りの激しかったり、攻撃的な性格を持つ動物はアニマルセラピーとしては向いていません。
アニマルセラピーの効果とは?
アニマルセラピーには、認知症予防や長寿の他にも、さまざまな効果がありますので、具体的にどのようなものか紹介します。
ストレス解消
ぬいぐるみとは違い、動物とふれあう際に抱っこをすると、ぬくもりや鼓動を感じることで、ゆったりとした気持ちになり、孤独感が薄れ、心を癒す効果があるので、ストレス解消にもつながります。
また、幸福感も得られるので、気持ちが安定すると言われています。
運動不足の解消・身体的機能の向上
アニマルセラピーの一環で、動物と一緒に遊んだり、散歩をしたりすることで、自然に体を動かすことができます。
普段動くことが億劫な利用者さんも、かわいい動物のためならと、散歩に出かけるなど、自然に身体を動かすようになるのです。
歩けない利用者さんでも、腕や指を動かせるので、座ったままでもボールや猫じゃらしなどのおもちゃで、一緒に遊ぶことも可能です。
また、運動量が増えることで、運動不足の解消や筋力の向上、メタボリックシンドローム予防の効果にもつながります。
認知症のリスクが低下
動物の世話のために、利用者さんが自ら行動する機会も増えます。
普段から施設内でのサポートを受ける利用者さんにとって、どうしても受動的になりやすいですが、動物のお世話をする必要があるという意欲が高まることによって、ごはんを与える時間や散歩の時間などを覚え、単調な毎日に刺激を与えます。
毎日のお世話は難しくても、一時的にえさを与えたり、抱っこしたりすることで、自分は必要とされているという充足感も得られるうえに、動物たちに「何かしよう」という意欲が高まり、認知症のリスクの軽減につながります。
社会的効果として他者との交流が増える
かわいらしい動物を通して、周りの人たちとも交流を持ちやすくなるため、友人が増え、人間関係が広がります。
いろんな方との交流が楽しめることで、心身共に健康維持にもなります。
アニマルセラピーによって、動物とのふれあいだけでなく、心身の健康や社会的なつながり、人間関係も豊かになることが期待できます。
無口だった方が動物とふれあうことで、発語が増えたり、動物の話題で会話が弾んだりすることで、人間関係が良好になるケースもあります。
アニマルセラピーの注意点
アニマルセラピーは高齢者にとって、たくさんのメリットがありますが、動物とふれあうことでデメリットもあります。
具体的にどのようなデメリットがあるのか、説明します。
感染症の危険
高齢者は抵抗力や免疫力が低下しているため、動物が人の口や手をなめることで、人獣共通感染症(ズーノシス)を患ってしまうリスクが健康な方よりも高いです。
アニマルセラピーを行う際は、動物の検診や予防接種などの衛生管理を事前に行っているか、「飼い主や管理する人が近くにいるのかを確認すること」や「終わったら利用者の手をしっかり洗うこと」が必要です。
他にも、定期的なシャンプーやブラッシング、爪切りなどで動物たちの不衛生を防ぐことも、大切なことです。
無理に勧めない
動物とふれあうことで得られる効果には、個人差がありますが、アニマルセラピーを受けた後、元気になった人もいれば、変わらない人もいます。
アニマルセラピーは、すべての人にメリットがあるとは限りません。
動物が苦手な方や動物に対してトラウマがある方にとっては、苦痛になることもあります。
アニマルセラピーは、療法として取り入れているので、無理強いをさせないように気をつけましょう。
また、長時間のアニマルセラピーは、高齢者と動物に負担がかかりますので、避けるようにしましょう。
万が一の事故を防ぐ
アニマルセラピーに参加する動物は、基本的なしつけや行動のコントロールができています。
飼い主は、動物の習性や特徴を理解し、いつもと違う表情や行動が見られたら中止するなどの対処をします。
ごくまれに、高齢者が動物に対して暴力をふるう等も考えられるため、事前に施設と話しあっておくといいですよ。
動物の安全と健康も考慮
動物に、過度なストレスや身体的な負担がかからないように気をつけることも大切です。
例えば、犬に与えてはいけない食べ物(チョコレートや牛乳・魚介類など)があり、人間の食べ物を動物に与えないよう注意しましょう。
ペットと暮らせる老人施設も増えてる?
施設へ訪問にくるアニマルセラピーとは違い、ペットと一緒に暮らせる老人ホームも注目を集めています。
施設によって「ペットと一緒に入居できるタイプ」と「施設で動物が飼育されていて、利用者が触れ合えるタイプ」の2種類に分かれます。
ペットと暮らせる特徴とは?
アニマルセラピーは、飼い主が別にいて一定時間の間だけ、触れ合えるというものですが、ペットは施設に入る前から、ずっと一緒に暮らしている家族です。
通常の老人ホームでは、ペットと一緒に暮らしたい人が入れないため、ペットを保健所へ連れていく方も多く、離れざるを得ない状況となってしまうことが現状です。
では、ペットと一緒に暮らせる老人ホームの特徴とは何かについて説明していきます。
ペット専用の設備が整っている
ペットと一緒に入居できる老人ホームの特徴として、ペット専用の設備が整っていることです。
ペット用の入浴設備やペットの散歩後の足を洗う洗い場、一緒に運動もできるドッグランのスペースを用意しているところがあります。
ペットの毛をカットして整えてくれるトリミングの設備もあるので、施設内でサービスを受けることができます。
利用者の居室でペットが飼える
大きな特徴の一つとして、入居前に自宅で過ごしていた時と同様、入居者の居室内で一緒に過ごすことができるので、ペットと一緒に入居できるようになっています。
いつでも大好きなペットと24時間一緒にいられるので、寂しい気持ちになることもありませんね。
一般居室とペットと同居居室がわけられている
ペットと一緒に入居できる老人ホームでは、ペットとの同居居室と一般居室がわけられています。
入居者の中には、動物が苦手な方も老人ホームに入居しているため、ペットの鳴き声や臭いなどで、ストレスやトラブルが起こるのを防ぐために、それぞれの居室をわけている施設が多いです。
ペットと一緒に暮らせる老人ホームの注意点
老人ホームでペットと暮らせることは、ペットを飼っている高齢者にとって、魅力的な施設といえますが、一方で利用するに当たって注意点があります。
利用料が高め
ペットと暮らせる老人ホームでは、ペット向けの設備が完備されているため、コストがかかります。
1ヶ月あたり数万円〜数十万円と、利用料金が通常の老人ホームと比べると高めに設定されているため、費用面に不安がある場合は、入居が難しいです。
ペットの種類や大きさに規制がある
ペットと一緒に暮らせる老人ホームの中には、ペットの種類や大きさによって、施設への同居を認めていない場合もあります。
大型犬といわれているようなペットや、危険性の高い動物などは入居できない場合があります。
他にも、小型犬など一見大人しそうに見える動物でも、「噛みつく癖がある」「脱走することが多い」など、性格によっては断られることもあります。
まとめ
高齢者にとって、メリットの多いアニマルセラピーを取り入れている介護施設が増えてきています。
単調な施設の生活が、レクリエーションやイベントの一つとして、動物とふれあうことで、「楽しい」「癒される」時間だけでなく、入居者たちの笑顔も増えます。
また、長く一緒に暮らしていたペットと施設へ入所することによって、離ればなれになり、寂しい気持ちになってしまう高齢者が多かったですが、ペットと暮らせる施設も少しずつ増えてきています。
動物と楽しい時間を過ごしたい方には、とてもおすすめですので、施設探しの参考としてみてください。