遠距離介護の現実、距離と心の近さと課題

遠距離介護の現実、距離と心の近さと課題

離れて暮らす親の介護が必要になったら、どうしますか?今すぐ親の介護を始められるでしょうか?

「今すぐ同居するのは難しい、仕事を辞めるわけにはいかない、介護には協力したいと思っている」そう思う人が多いと思います。

すぐには決められない問題ですよね。

親と離れて暮らす家族が、親のところに通いながら介護することを遠距離介護といいます。

遠方にいる親の介護が必要になった時「距離が離れていても介護することができるのか」と不安になると思います。

この記事では、遠距離介護の現実と課題について解説します。遠距離介護で悩んでいる人に参考になればと思います。

遠距離介護を選択する理由と現実

今は子どもは実家を出て、子どもだけの世帯を築いている家庭が多く、親だけが地方に残って過ごしています。いままで一緒に暮らしていないことが、遠距離介護の根本的な理由です。

介護が必要になってから「親に介護が必要になること自体、考えていなかった」と思う人も少なくありません。

親はいつまでも元気なイメージがありますよね。それに越したことはありません。ですが、ある日突然介護が必要になってしまう場合もあります。

介護が始まると、思い浮かべるのは仕事を辞めて実家へ戻るという選択肢です。

ですが新たに仕事を探すのは大変ですし、安定した収入が入らなくなる場合もあるということです。新しい職場よりも、働いている職場ほうが理解も得やすいため、仕事を辞めるのは最終手段がいいと思います。

自身のところへ引き寄せも選択肢のひとつですが、親自身が嫌がることが非常に多いです。新しい土地に慣れ、人間関係を築くのは大変ですし、慣れた土地で過ごしたいと思うでしょう。

こういった理由で、遠距離介護を選択する家族がいます。

親の介護が必要になった原因

親の介護が必要だと感じたのはどのような時なのでしょうか。

要支援・要介護別にみていきたいと思います。国民生活基礎調査(2022年度)を参考にしています。

要支援者

  • 1位 関節疾患19.3%
  • 2位 高齢による衰弱17.4%
  • 3位 骨折・転倒16.1%

要支援では骨や関節が変形することで起こる関節疾患、次に高齢による衰弱が多いです。

要支援の状態では、加齢や病気による衰えで介護が必要と感じる割合が高くなっています。

要介護者

  • 1位 認知症23.6%
  • 2位 脳血管疾患(脳卒中)19.0%
  • 3位 骨折・転倒13.0%

要介護では、親の認知症の発症や脳血管疾患で介護が必要になる割合が高くなります。

また要支援・要介護共に骨折・転倒が入り、介護が必要だと感じています。

転倒や骨折は身近な段差などで起こり、高齢となると特に注意が必要ですよね。

遠距離介護のメリット

遠距離介護にはどのようなメリットがあるでしょうか。ひとつずつ見ていきたいと思います。

精神的、肉体的なストレスの軽減

一番のメリットは、ストレス軽減ができるところです。

毎日親の介護に関わると、少なからずストレスが溜まります。毎日介護していると元気だった頃の親を思い浮かべてしまい、できなくなってしまったことや失敗へのいら立ちが出てくるからです。

また、親から依存されてしまうケースもあります。必要以上に頼られてしまうと、いくら親でも疲れてしまいますよね。そうすると、精神的にも肉体的にもかなりの負担になります。

親と適度に距離を置くことで、介護中心の生活でなくなるため、ストレス軽減に繋がります。精神的な負担が減るのは、最大のメリットだと思います。

転職や転居の必要がない

親の元へ戻るとなると転職しなければなりません。次の就職先を探したり、経済面の不安も出てきます。

遠距離介護の場合、仕事や生活を変える必要がないので、大きなメリットになります。

自分が路頭に迷ってはいけないので、しっかり考えることが大切ですね。

サービスが受けやすくなる

介護者が自宅にいる場合と比べて、介護保険のサービスは受けやすくなります。

例えば家に同居者がいると、掃除や洗濯などのサービスが受けられないので、そういったところも違ってきますよね。

遠距離介護のデメリット

遠距離介護をおこなう場合、良いことばかりではありません。次に、遠距離介護のデメリットについて紹介します。

緊急時の対応ができない

距離が遠いと、どうしても緊急時に時間がかかってしまいますよね。緊急時はどうするのか、よく話し合っておきましょう。

ケアマネージャーと連絡をとるようにし、何かあったときに対応してもらえる関係を築いておくのもいいと思います。

遠距離だからといって、連絡を怠ったり任せきりにするということは絶対に避けましょう。

費用負担が大きい

帰省するのに距離があると、新幹線や飛行機代、高速代などの交通費や宿泊費がかさみます。

帰省する回数が多く交通費も高いとなると、帰省するのも大変になってきますよね。

また、連絡手段になる電話代やリフォームが必要な場合のリフォーム費用など、費用がかさむことはおおきなデメリットになります。

遠距離介護の課題

遠距離介護の課題は、事故が起きた時や急変時の対応の難しさです。この課題は遠距離介護をしていく上では、変えることのできない課題だと思います。

ただ、事故が起きた時や急変時、いかに迅速に対応ができるかというところで変わってくると思います。

できるだけはやく対応できるように、家族で何回も話し合っておきましょう。

周りの人とのコミュニケーションをとり、対応できる体制をとっておくことで連絡がスムーズになります。体制をとっておくだけでも課題は軽減されるのではないでしょうか。

遠距離介護を選択するときの準備

遠距離介護を選択するとなった時、どのようなことを準備しておくか気になりますよね。どのような準備をしておけばいいのでしょうか。

親の希望を聞く

まず一番重要なことは、親の希望を聞いておくことです。

  • 子どもには迷惑をかけたくない
  • 子どもには介護のことは考えずに生きてほしい
  • 自宅を離れず住み慣れたところで過ごしたい

親は子どもに負担をかけずに過ごしたいと望んでいます。親の気持ちを尊重しつつ、それに見合ったサポートできる体制づくりができるようにしましょう。

介護が必要になる前に、普段の会話から何を望んでいるか聞けるといいですね。

親の生活を知る

離れて暮らしていると親の生活はどんどん変わっていきます。

  • できなくなっていること
  • 大変になってきていること
  • どのような食事をしているのか
  • どのような日常生活を送っているのか

一緒に暮らしていた頃の生活ではなくなっていることも多いので、今の親の生活スタイルをよく知ることが大切です。

食事や毎日の日課を知ることで、どのような支援が必要なのか確認するようにしましょう。

日々楽しみにしていることや趣味があれば、その活動が活力にも繋がるのでサポートしてあげることも必要になるでしょう。

親の人間関係を知る

親の人間関係や周囲の人との関係性を知りましょう。近隣の人とのコミュニケーションを取ることで、親の孤立を防ぐことにも繋がります。

親しくしていた方なら、いざという時に力になってくれることもあるので、良い関係性を継続させるのも遠距離介護をしていくうえでは大きなポイントです。

相談窓口はどこになるの?

介護が必要と感じたら、地域包括支援センターに相談しましょう。

どこでもいいわけではなく、親の住んでいる地域が窓口になります。

地域包括支援センターは、地域のさまざまな相談ができ、ケアマネージャーや介護事業所などの紹介もおこなっています。

窓口で介護認定の申請をすると、認定調査というものが受けられ、介護が必要かどうか判断されます。

介護が必要だと判断されると、ケアマネージャーがケアプランを作成し、ケアプランをもとに介護サービスを受けることができます。

ケアプランには、どんなサービスが週に何回必要なのか書いてあります。

判定されるまで時間がかかるので、早めに相談することをおすすめします。

相談すべきポイント

相談するべきことは以下のようなことになります。

  • 遠距離介護をしていること
  • 親の生活状態など
  • 介護の悩み
  • 帰省の頻度

気になることはメモに残し、疑問に思うことは聞けるのがベストですね。

かかりつけ医がいる場合や入院している場合、ソーシャルワーカーが相談に乗ってくれるところもあります。介護が必要になる前から、相談できる窓口や相談できる人を探しておくと、いざという時に焦らずに済みますね。

利用できるサービス

サービスを受けたいと思っても、どのようなサービスがあるのか知っておく必要がありますよね。どのようなサービスがあるのかを見ていきましょう。

介護保険サービスの他、自治体で行っているサービス、民間のサービスがあります。

介護保険サービス

介護保険のサービスは3種類あります。

介護度によって受けられるサービスも変わってきますので注意が必要です。

居宅サービス

自宅や施設に通い受けられる、日常生活の手助けや看護、リハビリを受けたいときに使えるサービスです。

  • 訪問サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問リハビリなど)
  • 通所サービス(デイサービス、・通所リハビリ)
  • 短期入所サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)
  • その他のサービス(福祉用具貸与、特定福祉用具販売など)

施設サービス

施設に入所した要介護者に対して提供される食事・排泄・入浴・リハビリを提供するサービスです。

  • 介護老人福祉施設(要介護3から)
  • 認知症対応型共同生活介護(要支援2から)
  • 介護老人保健施設(要介護1から)
  • 介護療養型医療施設(要介護1から)

地域密着型サービス

介護状態になってもできるだけ住み慣れた地域で生活できるように、地域に密着した身近な市域で提供されるサービスです。

  • 訪問・通所型サービス(小規模多機能型居宅介護など)
  • 認知症対応型サービス(認知症対応型通所介護など)
  • 施設・特定施設型サービス(地域密着型特定施設入居者生活介護など)

民間サービス

介護保険のサービスのほか、自治体で行っているサービスや民間事業所が行っているサービスがあります。

自治体によって異なるので、必要な場合は親の住んでいる自治体に問い合わせましょう。

配食サービス

自治体には食事を配達してくれる民間サービスがあります。食事はどうしても偏りがちになるため、バランスの摂れる食事ができるのはありがたいことですね。

配達の際は、安否確認もしてくれます。こういったサービスがあると、コミュニケーションもとることができます。

配食サービスは、地域によって条件が異なるため、地域包括支援センターやケアマネジャーに確認しましょう。

見守りサービス

見守りカメラを設置したり、民間の警備会社と契約することで受けられるサービスです。

見守りカメラを設置することで、スマートフォンから様子を見ることができたり、緊急通報や電話相談のサービスが受けられます。

帰省頻度はどのくらいが良い?

帰省頻度は、家族構成や親の心身状態によってさまざまなので一概には言えませんが、一般的に以下の目安があります。

  • 週1回
  • 2週間に1回
  • 月に1回
  • 数ヶ月に1回

親の状況を把握するためには、週末に帰省するのが望ましいと言われています。

ただ、仕事や自分の時間の確保ができなかったり交通費がかさんだりと、難しい場合もあります。そういう状況だと、2週間に1回のペースが理想ともいえます。

親とのコミュニケーションがきちんとはかれ、兄弟でのローテーションができる場合は、月1回や数ヶ月に一度程度が目安となります。

帰省頻度の間があくと、状況が変化していることもあるので注意が必要です。前回の帰省の時はできていたのに、今回はできなくなっているということも多いケースです。

また、身体機能は段階的に低下していく場合と急激に落ちる場合があり、日によっても差があります。認知症の症状も同様です。

兄弟で介護を行っている場合、情報交換をしておくことが大切です。

変化に気づいたらケアマネージャーにも報告しましょう。身体機能の低下などは今後のサービスを検討することにかかわってくるので、必ず報告するようにしましょう。

遠距離介護が円滑にいくポイント

では遠距離介護を円滑に進め成功させるには、どうしたら良いでしょうか。

介護が必要になった場合、長期に渡ることがほとんどです。最初に無理しすぎると疲れてしまうので、無理せず負担を減らすことを心がけましょう。

一人で抱え込まない

介護士やケアマネージャーなどとコミュニケーションをとり、一人で抱え込まないようにすることがポイントです。

介護はチームで行っているので誰でも相談できます。特にケアマネージャーとの連絡はこまめにおこない、利用状況や不安に感じたことはすぐに相談しましょう。

職場への理解

遠距離介護することを、職場に伝えておくことはとても重要です。介護休暇を取得する可能性もでてくるので、早めに相談しましょう。

前述したとおり、介護は一人で抱え込むことは良くありません。理解や協力が必要です。味方となってくれる方や、相談できる人が多いことに越したことはありません。

また、介護の経験者がいれば話を聞くこともできるのでおすすめです。

親とのコミュニケーションをとる

ケアマネージャーを通してだけでなく、親とも直接連絡を取り合うようにしましょう。

親が介護士などに言えず、我慢していることもあったりするので、聞いてあげられるといいですね。

普段から連絡をとっていると、なにげない会話から身体や心身の変化に気付くこともできるので、こまめに連絡を取るようにするのが円滑にいく大きなカギとなります。

費用はどこから出すのかを明確にする

家族で見る場合、費用の負担割合で揉めることはとても多いトラブルです。

家族で見ているのに、トラブルが起きてしまうと円滑にいきません。話しにくい話題かもしれませんが、トラブルにならないためにも、事前によく話し合うことが大切です。

施設の入所の検討する

施設の入所と聞くと億劫に感じる方もいますが、施設によっては以前と変わらない生活のまま見守りがついている施設もあります。

遠距離介護の限界は、要介護3を超えてからと言われています。親の状況に合わせてケアマネージャーと相談し、必要があれば検討するといいかもしれませんね。

まとめ:心の距離の近さが成功のカギ

いざ準備を完璧にし遠距離介護を始めても、思いがけないことがたくさん起こるのが介護の現状です。

準備しているからといって、その通りにはいきません。ただ、備えあれば憂いなしという言葉があるように、準備はとても大事です。

遠距離介護を成功させたいのなら、普段からコミュニケーションをとることです。まずは親自身が、介護についてどう思っているかを理解するようにしましょう。

そして、親だけでなくケアマネージャーを始め、周囲の方や支援してくれる人々とのコミュニケーションも必要です。

お互いに信頼関係を築くことがポイントになります。コミュニケーションをとり、相手を理解し相手にも理解してもらえるといいですね。

心の距離を縮めることこそが、遠距離介護を円滑にする近道ではないかと思います。

まずは親との心の距離を縮めてみましょう。

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