『ヤングケアラー』をご存じでしょうか。
今までもヤングケアラーを認知していた専門家などからは社会問題として捉えられてきました。
ヤングケアラーの先進国はイギリスです。
日本では、まだまだ認知度が低いため、いまはじめて聞いたというかたもいらっしゃるのではないでしょうか?
ただ、近頃は新聞やニュースなどで話題に取り上げられ、今後は大きな社会問題として目にする機会も増えるのではないかと私は考えております。
そこで今回はヤングケアラーについてお話しします。
ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーとは、前提条件として18歳未満の子どものことをいいます。18歳未満の子どもでも、あることを担っている子どものことです。
その『あること』というのは、家事や家族の世話なのです。
厚生労働省では、
『ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されているような家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。』
引用:厚生労働省 子どもが子どもでいられる街にhttps://www.mhlw.go.jp/young-carer/#about
と記載されています。
子どもが家の手伝いをすることは、どの家庭でも見られる光景ではないでしょうか。
たとえば、子どもが親の手伝いとして食器を洗ったり、家のなかの掃除をしたりすることは、ごく普通の日常であると思います。
ただし、年齢等に見合わない重い責任や負担を負うことが問題です。子どもが日常的に食事を作ったり、家の中を掃除したりする『家事』や、親や祖父祖母の『介護』などをおこなうことで、子どもが子どもとしての時間を受けられない状況に陥ってしまっているとしたらどうでしょうか。
それは既に、家の手伝いではなく、家の義務的な仕事になってしまうのはないかと考えます。
そうなると、
- 部活に打ち込む時間
- 友人と無邪気に遊ぶ時間
- 勉強をする時間
を失ってしまうことになります。
ヤングケアラーの社会問題は、家のなかで起こっていることが多く、当事者が子どものため、声をキャッチし辛いように私は思います。
ヤングケアラーの具体例
ヤングケアラーとして当てはまる内容は多岐にわたります。
- 障がいや病気のある家族のために家事をしている
- 親のかわりに幼い兄弟の世話をしている
- 障がいや病気のある兄弟の世話をしている
- 目が離せない家族の見守りをするなどの気づかいをしている
- 日本語が第一言語でない家族や障がいがあって話せない家族のために通訳をしている
- 家計のために労働をして障がいや病気のある家族を助けている
- アルコールや薬物、金銭問題を抱える家族に対応している
- 慢性的な病気である家族の看病をしている
- 障がいや病気のある家族の世話をしている
- 認知症の祖父母の世話をしている
幼い頃から当たり前のように家事や家族の介護・世話をしている子どもにとっては、家族をケアすることは当たり前です。
つまり、ケアを担っているという意識はなく、自身がヤングケアラーだと気づいていないことがあります。そのため、ヤングケアラーという存在は認識されないまま見過ごされてきました。
ヤングケアラーの何が問題なのか
家族をサポートすることは当たり前であるという考えもありますが、学業や友人関係、心とからだに不調が出てしまう場合があります。
学校では遅刻・早退・欠席をしてしまうこともあります。
自分の学習時間がとれないため、学業がおろそかになってしまう場合もあります。こうなると自分自身の将来への選択肢が狭まり、希望する進路をあきらめざるを得なくなる可能性が出てくるのです。
また、友人関係にも影響が出ます。
友人と遊ぶ時間を取りたいと思っても「祖父の世話をしなきゃいけないから・・・」「親の代わりに夕飯を作らなくちゃいけないから・・・」と友人とコミュニケーションを取る時間ができず、どんどん孤独を感じてしまうおそれがあります。
さらには就職活動にも影響を及ぼします。「私が家を出てもいいのだろうか」「介護があるから日中決まった時間に働けないのではないだろうか」など、自分の生き方を選ぶ際に『家族』が軸になってきてしまいます。
このように、ヤングケアラーは『自分の生きたいように生きられない』という人生の選択肢を迫られるのです。
ヤングケアラーになる原因とは
いくつかの要因はありますが、ひとつとして、家庭内の人手不足があげられるでしょう。
昔の日本は、三世代の拡大家族が一般的でしたが、現在の日本では親子二世代の核家族が主流です。そして共働きの世帯も増えています。
仕事をしていると、夜遅くなってしまうことはないでしょうか?
私も夜遅くなってしまうことがあります。
仕事をしていると致し方ない部分ではあるかと思いますが、両親の帰りが遅くなると、子どもだけで夕飯をとる家庭もあるのではないでしょうか。
そんな現代を映し出すかのように『子ども食堂』という支援方法も生まれています。それだけ、両親の共働きやひとり親家庭が増加しているということの表れではないでしょうか。
このように、家庭内でケアを担うことのできる大人が家にいないため、子どもが介護や家事をやらざるを得ない状況になっている家庭もあります。
たとえば、ひとり親世帯があるとしましょう。
親は仕事のために夜が遅い。祖母は認知症で誰かが面倒をみないといけないので、子どもは学校から帰ってきたら祖母の面倒を看る。
このように、子どもが祖母の介護をしないといけない状況になってしまっている家庭もあるのではないでしょうか。
親の働き方や、経済的な理由により、祖父に十分な支援や必要な施設に入所をさせたりすることも難しい場合などは、子どもが祖父のケアをせざるを得ない状況となります。そうして、ヤングケアラーとなります。
これは、ひとつの要因です。
ヤングケアラーの現状
令和2年度の厚生労働省の調査において、調査に参加した中学校の46.6%、全日制高校の49.8%にヤングケアラーが「いる」という調査結果が出ています。
世話をしている家族が「いる」と回答した人に頻度を確認すると、半数近くが「ほぼ毎日」世話をしているという結果でした。しかし、ヤングケアラーについて考えられるようになったのは最近のことであり、まだまだ現状では正確な状況は掴めていません。
引用:厚生労働省 ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書
三菱UFJリサーチ&コンサルティングより
https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2021/04/koukai_210412_7.pdf
ヤングケアラーの今後
結論から言えば、ヤングケアラーの子どもはこのままの状態が続くと年々増えていくことになるでしょう。
日本は、2007年から超高齢社会に突入したといわれています。みなさまもご存じの通り、高齢化率は今後も上昇する予想です。
また、合計特殊出生率については1.36とされており、こちらもみなさまもご存じの通り、子どもの出生率は徐々に下降傾向にあります。
よって、高齢者が徐々に増え、子どもが少なくなっていくと、高齢者を子どもが支える世帯が増えることが誰しもが予想できるでしょう。
このことにより、将来ヤングケラーの問題はさらに顕在化されるとともに、年々増加していくことが簡単に予想できるのです。
ヤングケアラーに対する国の支援策とは
早期発見と把握
家庭内の問題は表面化しづらいため把握が難しいことが現状です。子どもに寄り添い、どのような支援が必要かしっかりと聞き取ることが必要です。
学校では教職員は生徒たちと接する時間が長いので、日々の行動で、何か変化はないか汲み取っていけるようヤングケアラーに関する知識を深めていく必要があります。
保護者と接するような行事のタイミングがあれば情報を共有しましょう。地域の目で見守ることも必要です。
医療、介護、福祉の事業ではすでにヤングケアラーとつながりができている場合があります。
いつも祖父母の介護をしているのがお孫さんではないでしょうか?普通であれば学校に行っている時間に自宅にいることはないでしょうか?もし不自然なことがあれば支援につなげられるようにしましょう。
支援策の推進
現在、ヤングケアラー本人が自発的に相談しようとした場合、役所などの公的な窓口へ相談はハードルが高く、踏みとどまってしまいやすくなります。
そのため、若者でも利用がしやすいようなSNSなどで気軽に相談しやすい窓口を検討中です。
ヤングケアラーからは学校の勉強や受験勉強のサポート希望の声もあげられています。
そのため、学習支援事業へつなげることが求められている状況となっています。
また、世話をしている家族がきょうだいであることが最も多いです。幼い兄弟の保育園送迎などの保育サービスや家事を手伝えるような生活支援の推進が必要な状況となっています。
社会的認知度の向上
ヤングケアラーとは最近注目されはじめている社会問題であり、認知度が低い状態です。
今後は国として広報活動を活性化させていく予定となっています。
また、その上で『ヤングケアラー=悪いこと』というイメージにしないことも重要です。
介護、福祉、教育機関に関わっている人々も、悩みをもっている子どもたちを門前払いなどせず、しっかりと悩みを聞き、受け入れてあげることが必要です。
参考:厚生労働省 国の支援策をまとめた報告書はこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/000780549.pdf
わたしたちができるヤングケアラーへの支援とは
さまざまな支援策が考えられていますが、現状ではまだ万全なサポート体制が整っていません。もちろん念頭においていただきたいのは家族のケアや介護をすることは決して悪いことではありません。
また、ヤングケアラーにしたくてさせていしまっている親もいないと私は信じています。
ただ、それを支えるシステムがまだまだ日本は弱いと感じます。
『良い、悪い』の見方だけしてしまうと、自身の生活や心とからだに支障がでてしまうこともあるように感じますので、そうではないということは記載します。
少しでも、ヤングケアラーの認知度を上げていき、ヤングケアラーの理解を深めていくことが、私たちにできる第一歩だと私は考えます。
そこから、「自分に何ができるのか」を考えると、ヤングケアラーを支えたり、助けられる支援ができるのではないでしょうか。
さいごに
『近所のよしみ』では、高齢者に特化した会社ですから、知識も経験も豊富だと自負しています。
ですから、弊社のことを高齢者に関する社会問題の解決能力は高いと認知している、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネージャーから自身で抱えている案件を「どうしたらいいか?」と困っている案件の相談が来ることもあります。
私たちは本物のプロですから、多様な問題を解決してきました。
私たちであれば、ヤングケアラーの社会問題も、高齢者に関わる介護の分野においては、私たちも助言したり解決できる仕組みを共に考え導く手伝いはできると思います。
このように、できることからはじめることで、
日本の社会全体から「困った」「不安だ」という思いを解消できる社会になるよう、『近所のよしみ』では日々精進しております。
さいごまでお読みいただきましてありがとうございます。
参考:
厚生労働省 子どもが子どもでいられる街に
https://www.mhlw.go.jp/young-carer/
厚生労働省 令和3年度 ヤングケアラーについて理解を深めるシンポジウム
厚生労働省 図表1-1-7 出生数、合計特殊出生率の推移
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-01-07.html
厚生労働省 国の支援策をまとめた報告書はこちら
https://www.mhlw.go.jp/content/000780549.pdf