死後離婚とは?夫と死別後に義理家族と別れる選択。遺産相続・遺族年金への影響を解説

死後離婚とは?夫と死別後に義理家族と別れる選択。遺産相続・遺族年金への影響を解説
夫が亡くなったので、義理の家族との関係を終わらしたいと思うけど方法はないの?
死後離婚を選んだあと、遺産相続の権利や遺族年金の受け取りに影響はあるの?

配偶者が亡くなった後、さまざまな理由によって義理の家族との関係を解消し、新しい生活をスタートさせるために死後離婚を選ぶ方が多いです。

しかし、死後離婚を選ぶとどのようなメリット・デメリットがあるのか、手続きはどのように行うのか、遺産相続の権利・遺族年金に受け取りに影響があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。

今回は義理の家族との関係を解消する死後離婚を選ぶことでの効果や影響、手続きの方法について解説します。

こちらの記事を読むと、本当に死後離婚を選ぶべきか考える際の一助となるでしょう。

配偶者が亡くなり、新たな生活をスタートさせたい方・義理の家族との関係がうまくいかず死後離婚を考えている方は、ご覧ください。

死後離婚とは?配偶者の死後に義理の家族との関係を終える手続き

死後離婚とは、配偶者(夫または妻)の死後に、義理の家族との関係を解消するための手続きのことです。

配偶者が亡くなった場合、法律上、配偶者との婚姻関係は解消されます。

しかし、義理の家族との姻族関係はそのまま続くため、義理の家族との関係を解消し、新たな生活をスタートさせたい方は死後離婚の手続きが必要です。

また、死後離婚を選ぶと、以下の義理の家族との関係を解消できます。

  • 他方配偶者の父母
  • 他方配偶者の祖父母
  • 他方配偶者の兄弟・姉妹
  • 他方配偶者の曽祖父母
  • 他方配偶者の甥・姪
  • 他方配偶者の叔父・叔母

死後離婚を選ぶ理由はさまざまありますが、義理の家族の扶養や介護を求められることや義理の家族との関係が悪化していることを理由に、死後離婚を選ぶ方は少なくありません。

法務省の戸籍統計によると、年間3,000件近くの方が死後離婚を選んでいることを発表しており、今後、高齢化が進むことによって、死後離婚を選ぶ方が増える可能性があります。

死後離婚の3つのメリット

死後離婚をすると、具体的にどんなメリットがあるの?

死後離婚を選ぶと、以下の3つのメリットがあります。

  • 義理の家族の扶養や介護の心配がなくなる
  • 義理の家族との距離を置くことができる
  • お墓や仏壇を管理する負担がなくなる

一つずつ解説します。

義理の家族の扶養や介護の心配がなくなる

本来、義理の家族に対する扶養や介護を行わなければならない法律上の義務はありません。

しかし、配偶者が亡くなった後も義理の家族との関係が続き、「家族だから」という理由で、生活費のサポートや介護を求められる可能性があります。

死後離婚を選び、義理の家族との関係を解消すると、扶養や介護を行う可能性をゼロに近づけることができます。

そのため、義理の家族の扶養や介護の心配がなくなる点は、大きなメリットの一つと言えるでしょう。

ただし、「特別な事情」に該当する場合、死後離婚をしていても家庭裁判所から扶養義務を負わせることができます。

義理の家族と距離を置くことができる

例えば、すでに義理の家族との関係がうまくいっていない場合、配偶者が亡くなった後も関係が続くことにより大きなストレスを感じる方も少なくありません。

また、義理の家族と同居している場合、配偶者が亡くなった後も、同居を解消するきっかけが掴めないまま同居が続き、気まずさを抱えながら生活する方もいるでしょう。

死後離婚を選ぶことによって、義理の家族との関係を解消し、距離を置くことができるため、家族関係のストレスからの解放や同居の解消につながります。

そのため、新しい生活に向けてスタートしたい方にとって、大きなメリットとなります。

お墓や仏壇を管理する負担がなくなる

お墓や仏壇を管理する負担がなくなることも死後離婚のメリットの一つです。

例えば、配偶者が亡くなり、残された方にお墓や仏壇などの祭祀財産が継承された場合、お墓や仏壇の管理を行わなくてはなりません。

また、葬儀・法事などの祭祀も残された方が執り行わなければならないため、心身の負担や経済的な負担が生じる可能性があります。

さらに、亡くなった配偶者や義理の家族のお墓に入りたくないと考えていても、伝統を重んじる家庭の場合、不本意ながらも一緒のお墓に入らなければならないケースもあります。

しかし、死後離婚を選ぶと、お墓や仏壇の管理をせず済むことや一緒のお墓に入らず済む可能性が高くなるため、大きなメリットと言えるでしょう。

死後離婚を選んでも、お墓や仏壇などの祭祀財産の継承権を手放せる訳ではありません。継承権を手放すには、義理の家族と新たな継承者について決めなければなりません。

死後離婚の3つのデメリット

死後離婚のメリットは分かったけど、反対にどんなデメリットがあるの?

死後離婚を選ぶと、以下の3つのデメリットが生じます。

  • 義理の家族との関係悪化やトラブルに発展する
  • 子供から反対されるリスクがある
  • 亡くなった配偶者の墓参りや法事に参加しづらくなる

くわしく解説します。

義理の家族との関係悪化やトラブルに発展する

死後離婚は各自治体の役場で手続きを行い、受理された後は義理の家族へ通知されることはありませんが、戸籍謄本に記載されます。

そのため、義理の家族が何らかのきっかけで戸籍謄本を取得した際、死後離婚を行ったことが知られる可能性があり、実際に知られてしまうと関係悪化の原因につながるでしょう。

また、元々義理の家族との関係が悪化している場合、死後離婚を選ぶことによって、より義理の家族の感情を逆撫でし、思わぬトラブルに発展するリスクもあるため注意が必要です。

子供から反対されるリスクがある

子供から反対されるリスクがあることも、死後離婚のデメリットの一つです。

死後離婚を選んだとしても、子供と義理の家族との関係は、法律上変わりません。

しかし、死後離婚によって義理の家族との関係が悪化すると、今まで可愛がってくれた祖父母などの親族と疎遠になり、子供はショックを受けるでしょう。

また、子供からすると死後離婚はあくまで大人の都合であるため、正当な理由があったとしても受け入れにくい場合もあります。

最悪の場合、義理の家族から嫌がらせを受ける可能性もあるため、子供から死後離婚を反対されるリスクや子供との関係が悪化するリスクが伴われます。

亡くなった配偶者の墓参りや法事に参加しづらくなる

死後離婚を選ぶと、義理の家族との関係が悪化する可能性があります。

その中で、亡くなった配偶者の墓参りや法事を義理の家族が執り行う場合、参加しづらくなるリスクがあります。

最悪の場合、参加させてもらえない場合もあるため、亡くなった配偶者との夫婦関係に問題がなかった方や子供にとってデメリットとなるでしょう。

死後離婚の手続き方法と相談できる窓口

死後離婚を選んだ場合、本籍地または住所地である自治体の役場に、以下の書類などを準備し、届け出なければなりません。

  • 姻族関係終了届
  • 戸籍全部事項証明書
  • 届出人の印鑑
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)

本籍地以外で届け出る場合、戸籍謄本などが必要になります。

提出期限は、配偶者の死亡届が受理された後であればいつでも届け出ることが可能で、義理の家族からの承諾も必要ありません。

また、死後離婚が成立した場合、届け出た自治体の役場から義理の家族に通知されることはありません。

このように、死後離婚の手続きは個人でできますが、手続きの方法や遺産相続などに関わるトラブルについて不安がある場合、以下の窓口で相談できます。

  • 弁護士:死後離婚の手続きなどのアドバイス・遺産相続や義理の家族とのトラブルに関する相談ができる
  • 自治体の役場の担当窓口:届出の方法や必要書類に関するアドバイスを受けることができる
  • 税理士:死後離婚が関わる遺産相続や税金への影響などのアドバイスを受けることができる

弁護士・税理士に相談したいけど、どこに相談すればいいのか迷っている方は、弁護士・税理士を検索できるさまざまなポータルサイトや法テラスの活用がおすすめです。

死後離婚と遺産相続・遺族年金との関係

死後離婚をすると遺産相続の権利を手放さなければいけないの?
死後離婚をすると遺族年金の受け取りはどうなるのだろう…

死後離婚を考える際、遺産相続・遺族年金への影響について悩む方も多いでしょう。

こちらでは、死後離婚と遺産相続・遺族年金との関係や影響について解説します。

死後離婚を選んでも遺産を相続できる

死後離婚を選んだ場合、遺産を相続することは可能です。

死後離婚はあくまで、義理の家族との関係を解消するための手続きであり、亡くなった配偶者との関係に影響がないため、遺産を相続する権利はそのまま残ります。

また、死後離婚を選んだことにより、義理の家族から遺産を返すよう迫られたとしても、要求に応じる必要はありません。

しかし、借金などの負の遺産があるため相続放棄を希望する場合、死後離婚とは別に、相続放棄の手続きが必要です。

死後離婚を選んでも遺族年金を受け取ることができる

基本的に、遺族年金の受給資格を失う条件は、以下のとおりです。

  • 死亡した時
  • 再婚した時
  • 直系の血族や親族以外の養子になった時
  • 配偶者の死亡時に30歳未満で子供がいない妻が遺族厚生年金の受給権発生から5年経過した時

このように、死後離婚は上記4つの条件に該当しません。

また、亡くなった配偶者との関係は変わらないため、死後離婚を選んでも遺族年金を受け取ることできます。

すでに遺族年金を受け取っている場合も、そのまま続けて受け取ることができます。

死後離婚を考える時によくある2つの疑問

姻族関係終了届を提出した後に取り消すことはできないのかな?
死後離婚をした後、苗字を旧姓に戻したいんだけどできるのかな…

死後離婚を考えると、さまざまな疑問が出てくるため、決断できない方も少なくありません。

こちらでは、死後離婚を考える時によくある2つの疑問について解説します。

姻族関係終了届を提出した後に取り消すことはできないの?

姻族関係終了届を一度提出すると、取り消すことはできません。

配偶者が生きている場合、一度離婚しても再婚することで義理の家族との関係を戻すことができます。

しかし、配偶者が亡くなった後に姻族関係終了届を提出すると、亡くなった配偶者と再婚できないため、義理の家族との関係も戻すことができません。

そのため、死後離婚を考えている場合、後悔しないよう十分に検討しましょう。

死後離婚をした後、苗字を旧姓に戻す事はできるの?

死後離婚をした後、苗字を旧姓に戻すことはできます。

死後離婚をすると、義理の家族との関係を解消できますが、戸籍上は亡くなった配偶者と同じ戸籍に入っている状態のままです。

旧姓に戻したい場合、自治体の役場へ「復氏届」を届け出ることで、結婚前の戸籍に戻すことや新しい戸籍を作ることができます。

しかし、復氏届によって戸籍を変えることができるのは本人だけであり、子供の戸籍を変えることはできません。

そのため、子供の戸籍を変える際、「子の氏の変更許可申請書」などの必要書類を家庭裁判所に提出し、認められるよう手続きを進めることが必要です。

まとめ

今回は、死後離婚について解説しました。

死後離婚は配偶者の死後、義理の家族との関係を解消するための手続きのことです。

義理の家族との関係を解消することによって、さまざまな負担やストレスから解放され、新しい生活をスタートさせることができるでしょう。

一方で、死後離婚をきっかけに、義理の家族や自身の子供との関係悪化などのデメリットが伴われます。

また、死後離婚の手続きを行うと、後から取り消すことができないため、十分に検討しなければなりません。

そして、死後離婚による遺産相続・遺族年金への影響はほとんどありませんが、遺産相続の権利を放棄したい場合、別に相続放棄の手続きが必要です。

死後離婚は個人で手続きを進めることができますが、同時に解決しなければならない問題が伴われるケースもあるため、専門家からの協力を得ながら進めましょう。

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