介護放棄とは?親の介護は子供の義務?親の介護をめぐり兄弟姉妹間でトラブルも…事前準備や対策を解説

介護放棄とは?親の介護は子供の義務?親の介護をめぐり兄弟姉妹間でトラブルも…事前準備や対策を解説

高齢化が進む日本で、深刻な社会問題として浮上しているのが「介護放棄」です。

厚生労働省の調査によると、高齢者虐待の約16%が介護放棄によるものとされています。

「仕事が忙しくて親の介護まで手が回らない」「介護の知識がなく何をすればいいかわからない」「兄弟姉妹と介護の分担で揉めている」など。こうした悩みを抱える方は決して少なくありません。

介護放棄は、要介護者の生命に関わる重大な問題であると同時に、介護者自身のSOSのサインでもあります。

この記事では、介護放棄の実態と予防法、そして具体的な解決策について、体験談を交えながら詳しく解説します。

父親の介護に4年間奮闘の中、介護放棄がよぎった私の体験談も参考になれば幸いです。
職員さん
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介護放棄とは?介護放棄の基本的理解

介護放棄の定義

介護放棄とは、法律で定められた扶養義務者が正当な理由なく介護を怠ることを指します。

民法では、親の配偶者、子供、兄弟姉妹の3者に扶養義務が課せられており、この義務は放棄することができません。

たとえ親との関係が良好でない場合や、親から扶養を辞退されたとしても、親が生活困窮状態にある場合は扶養義務が継続します。なお、子供の配偶者(嫁・婿)には法的な扶養義務はありませんが、実態として介護に関わることも多い状況です。

介護放棄とネグレクトの違い

ネグレクトは、必要な保護や養育を怠ることを意味し、主に児童虐待の文脈で使用される用語です。

介護の文脈では、要介護者に対する放置や無視を指し、介護放棄と類似した概念として扱われます。

ただし、ネグレクトは意図的であるか否かを問わず、結果として必要なケアが提供されていない状態を指す広い概念として理解されています。

介護放棄が起こる背景

介護を投げ出してしまう背景には、いくつもの問題が重なっています。

一つ目は、仕事や子育てと介護の両立が難しいということです。介護には多くの時間と体力が必要です。今の働き方では、仕事をしながら介護をすることが本当に大変なのです。

二つ目は、家族関係の問題です。親との間に昔からの気まずさがあったり、兄弟姉妹の間で「誰が介護をするのか」でもめたりすることがよくあります。

因みに、私も父親との関係がギクシャクしていましたが、介護に真摯に向き合ったことで、父とは良好な関係になっていきました。稀なタイプだと思いますけどね。
職員さん
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三つ目は、お金の心配や介護の仕方が分からない不安、そして精神的な疲れです。

介護にはお金がかかりますし、どう介護すればよいか分からず戸惑うことも少なくありません。毎日の介護で心が疲れ果ててしまうことも多々あります。

このように、一つ一つの問題は大きいのに、それらが重なって起きてくるのが介護放棄の現実なのです。

介護の法的義務者

配偶者の扶養義務

配偶者の扶養義務は、他の親族よりも強い「生活保持義務」とされています。

民法752条に基づき、夫婦は同程度の生活水準を維持する義務があり、これは介護においても適用されます。

具体的には、自身の生活水準を低下させてでも配偶者の介護を行う必要があります。

この義務は婚姻関係が継続している限り存続し、別居していても免れることはできません。ただし、DVなど婚姻を継続し難い重大な事由がある場合は例外となる可能性があります。

私の母は、父からの精神的なDVにより離婚が成立。そのまま別居で介護放棄となりました。
職員さん
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子供の扶養義務

子供の親に対する扶養義務は「生活扶助義務」として位置づけられています。

これは配偶者間の義務より程度が軽く、子供自身とその家族の生活水準を維持したうえでの余力の範囲内で行うべきとされています。

複数の子供がいる場合、扶養の分担は当事者間の協議で決定することが原則です。

話し合いで決着がつかない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。

因みに、長男が優先的に扶養すべきという法的な規定はありません。
職員さん
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兄弟姉妹の扶養義務

兄弟姉妹の扶養義務も民法877条に定められていますが、これも子供同様「生活扶助義務」に分類されます。

兄弟姉妹間での扶養の順位や分担方法は、法律上特別な規定はなく、当事者間の話し合いで決めることが原則です。

ただし、協議が整わない場合や話し合いができない場合には、家庭裁判所が扶養の順位を決定することができます。また、扶養能力のある兄弟姉妹がいない場合は、三親等内の親族にまで扶養義務が及ぶ可能性があります。

義理の家族の立場

義理の家族、つまり嫁や婿には、法律上の介護義務はありません。

しかし、実際には介護を担うことが多いのが現状です。

特に嫁の場合、「当たり前のように」介護を期待されることが多く、そのために心も体も疲れ切ってしまう人が少なくありません。

このような問題を防ぐために大切なことは、家族でよく話し合って、誰がどのように介護するのかをはっきりさせることです。また、介護の負担が一人に集中しないよう、介護サービスを利用することも考えておく必要があります。
職員さん
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介護放棄防止のための対策

家族間の話し合いが大切

介護放棄を防ぐためには、家族間での早期からの話し合いが重要です。

私の経験上、介護が必要となる前から、誰がどのような形で介護に関わるのか、費用負担はどうするのか、介護サービスをどう活用するのかなどについて、具体的な話し合いを持つことが望ましいですね。
職員さん
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特に、当事者間だけでなく、第三者を交えた話し合いを行うことで、より客観的な視点から解決策を見出すことができます。また、定期的に状況を確認し、必要に応じて役割分担を見直すことも重要です。

専門家を活用

介護放棄を防ぐためには、専門家の適切な活用が効果的です。

家族だけで介護の問題を抱え込まず、ケアマネージャー、弁護士、医療専門職などの専門家に相談することで、客観的な解決策を見出すことができます。

特に、家族間で意見が対立したり、介護方針について合意形成が難しい場合は、第三者である専門家の介入が有効です。専門家は、当事者双方から話を聞き、必要な資料を確認したうえで、具体的な解決案を提示したり、必要な助言を行うことができます。

行政サービスの利用

介護保険制度をはじめとする行政サービスの適切な活用は、介護放棄を防ぐ重要な要素です。

介護の負担を軽減するためには、地域包括支援センターや福祉サービスなど、様々な公的支援制度を利用することが効果的です。

これらのサービスは、介護する側とされる側の双方の負担を軽減し、持続可能な介護環境を整えることができます。

また、行政サービスを利用することで、専門家による定期的なモニタリングも可能となり、介護放棄のリスクを早期に発見することができます。

地域包括支援センターへの相談

介護放棄が発生した場合、地域包括支援センターは重要な相談窓口となります。

センターには介護の専門家が常駐しており、介護に関する様々な問題に対して包括的な支援を提供します。

具体的には、介護サービスの利用相談、家族間の調整支援、関係機関との連携調整などを行います。

特に、介護放棄のような複雑な問題については、法的な観点だけでなく、福祉的な観点からも解決策を提案することができ、継続的な支援体制を構築することが可能です。私も地域包括支援センターとの連携で介護放棄にならずに介護を全うすることができました。
職員さん
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介護施設の利用

介護放棄のリスクがある場合、介護施設の利用を検討することも有効な選択肢です。

施設入所によって、専門的なケアを受けることができ、家族の負担も軽減されます。

施設選びの際は、要介護者の状態や希望、経済状況などを考慮する必要があります。

また、費用負担については、介護保険制度の利用や、扶養義務者間での分担方法について事前に話し合いを持つことが重要です。

必要に応じて、ケアマネージャーや施設の相談員に相談することで、適切な施設選びが可能となります。

私の父親も要介護1からでしたが、家族が出来る介護の限界範囲となる要介護4になってから施設の入居準備となりましたが、施設に入る前に父は亡くなってしまいました…。
職員さん
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まとめ

介護放棄を予防するためには、早期から家族間で具体的な話し合いを持つことが重要です。

介護の方法、費用負担、役割分担などについて、できるだけ具体的に決めておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

また、介護保険制度などの公的サービスを積極的に活用し、家族の負担を軽減することも大切です。特に、当事者だけでなく第三者を交えた話し合いを行うことで、より客観的な解決策を見出すことができます。

介護問題に直面した際は、様々な相談窓口を積極的に活用することが重要です。私の場合は、地域包括センターのケアマネジャーがとても良い方で、親身に対応して頂けたので、一つ一つの問題解決が迅速に進みました。お陰様で介護放棄になりませんでした。
職員さん
職員さん

家族だけで問題を抱え込まず、地域包括支援センター、家庭裁判所の調停制度、介護の専門家など、外部の専門機関や専門家に相談することで、より客観的な解決策を見出すことができます。

介護放棄に関する今後の課題として、介護と仕事の両立支援の強化、家族間の介護分担の明確化、介護保険制度のさらなる充実などが挙げられます。

特に、高齢化が進む中で、介護の負担が特定の家族に集中することを防ぐための制度設計や支援体制の整備が必要です。また、介護に関する法的義務と実態との乖離を埋めるための取り組みも重要です。

介護放棄についてこれらの課題に対しては、社会全体で支える仕組みづくりが求められているのです。

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