あまり聞くことがないナーシングは、主に欧米の呼び方で日本ではまだ知らない方も多く、有料老人ホームに類する施設です。
施設によっては、看護師が24時間常駐するなど医療面での手厚いサポートが特徴で、今後需要が高くなると言われています。
そんなナーシングホームと老人ホームとの違いやケア体制、メリットなどをもっと詳しく解説していきます。
ナーシングホームとは?
ナーシングホームとは、介護士だけでなく看護師が24時間365日常勤していて、医療提供や看取りまで行える介護施設です。
主な入居者は、脳血管疾患の後遺症や重度の障害、介護度が高く寝たきり状態の方、在宅介護では負担が非常に大きく、自宅で暮らすことが難しく医療的サポートの必要な方が対象です。
「医療特化型高齢者住宅」とも呼ばれているので、介護保険がなく、医療依存の高い方でも対象になります。
「医療」と「介護」が一体化し、介護士だけでなく看護師を中心とした支援を行えるため、入居者の見守りや健康管理を行ったり、医師や薬剤師など医療機関と連携して、継続的な医療・急変時の対応も可能です。
ナーシングホームの背景について
超高齢化社会と言われ、高齢者が増えていく一方で、医療現場では病床が足りず長期間の入院が難しかったり、人手不足によって、医療依存度が高く医療的ケアや介護度の高い方のサポートが必要であっても、対応可能な施設が減少しています。
これによって、症状が軽く集中治療が必要がない患者は、在宅や介護施設への転居を余儀なくされます。
原因の1つは、介護施設の現状における介護士・看護師人材不足が深刻なことによって、高度な医療行為や質の高いサービスを提供できない施設が増え、少子化や核家族により、在宅での介護や病院や施設での看取りは負担が大きくなっていく傾向です。
2つめは、超高齢化社会と呼ばれている日本では、死者数も年々増加しています。
厚生労働省の調査によると、2040年に推計される年間死者数はおよそ160万人とも言われ、今後「多死社会」となります。
また、60歳以上の約半数が「自宅で最期を迎えたい」と答え、約3分の1の方が「孤立死」を身近に感じています。
しかし実際は、介護度が重くなったり、医療的ケアが必要となってしまうことで、介護施設や自宅で最期を迎えることが難しく、病院で亡くなる方は全体の約8割と増加するため、看取り問題は重要視されています。
この問題を埋めるため、「医療」と「介護」を一体化した施設がナーシングホームです。
自宅で最期を迎えられませんが、「住み慣れた場所で最期まで暮らしたい」という終末期ケアのニーズに対応する施設として期待があります。
ナーシングホームの特徴について
医療依存度の高い方や高齢者向けの施設として、介護士と看護師が24時間体制で入居者の生活を支えます。
- 看護師が24時間体制で勤務
- 食事や介護サービスを状況に応じて受けれる
- 全室一般住宅としての個室
- バリアフリー
- 24時間365日の見守り機能
といった、現在の医療ニーズが増える中、看護師が24時間体制でご利用者様を支える施設は非常に希少です。
配置されている専属スタッフ
ナーシングホームは、看護師や介護士だけでなく専属のスタッフが携わるため、安心した生活を送ることができます。
- 介護士
- 看護師
- 生活相談員
- 機能訓練指導員
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
施設にもよりますが、看護師が24時間体制で常駐しているため、体調が急変したときも速やかに対応することが可能です。
また、ナーシングホームの特徴の一つとして、地域の医療機関と連携していることで、連携先の医師が訪問診療を受けられます。
他にも、リハビリスタッフのいる施設では、身体機能の維持・向上のためにリハビリ訓練を受けることも可能です。
医療体制が充実している
病気やケガなどによって健康状態に問題がある人が、治療と回復を目的として利用する施設です。
ナーシングホームは、入居者が医療的ケアを受けながら日常生活を送れるようサポートすることを目的とした施設です。
しかし、看護師が常時駐在していますが、医師は地域の医療機関から訪問しにきているため、ナーシングホームには常駐の医師がいません。
そのため、手術や麻酔を必要とする処置や抗がん剤治療などは対応できないこともあります。
ですが、看護師が常駐しているだけで対応できる医療的ケアや疾病の種類は幅広いです。
主な医療的ケアは以下のとおりです。
- 点滴
- 経鼻経管栄養
- 胃ろう・腸ろう
- たんの吸引
- 褥瘡(じょくそう)の処置
- 人工膀胱・人工肛門の管理
- 気管切開のケア
- 酸素療法など
特別養護老人ホームやグループホームなどの介護施設では、対応できない医療的ケアもナーシングホームであれば対応できる体制が整っているため、医療的サポートの必要な方や重度の障害の方でも、安心して暮らすことができます。
また、末期がんやパーキンソン病、肝炎やHIV、感染症面の受け入れ、ALS看取り対応、うつ病や統合失調症と言った精神疾患、認知症など幅広い患者を受け入れます。
介護体制との両立
ナーシングホームは、看護師が健康管理を行っているとともに、介護士が食事や排泄、入浴などの生活全般を介助してもらうことができる上に、看護師と介護士が入居者の情報を共有しやすいです。
そのため、入居者の体調に異変が生じた際も迅速に対応できるのも、ナーシングホームの特徴の一つです。
他にも、機能訓練も受けられるので、身体機能の維持・向上も期待でき、療養型の医療施設とは異なり、寝かせきりにすることはありません。
ナーシングホームの費用は?
施設ごとに費用は異なりますが、内訳は概ね同じような内容で、また別に消耗品代や日用品代、医療費などが掛かる場合もあります。
ナーシングホームに掛かる費用内訳について
- 入居一時金(または敷金)
- 月額料金(家賃、管理費、光熱費、食費、介護サービス費など)
- その他(クリーニング・洗濯代、理美容代、おむつ代など)
上記に記載されている費用内訳の合計を月額費用は、1人あたり10万円〜15万円が相場となり、その他の費用も含まれると12万円〜17万円です。
地域や施設によって費用は異なりますが、他にも介護度や疾病内容によっても変わります。
例えば、経管栄養などの場合は食事が不要なため、食費が掛からなかったり、生活保護者や特定疾病の方は、家賃の負担を軽減している施設もあります。
また、所得に応じて自己負担の割合が異なる介護保険は、介護度が高くなると給付限度額が大きくなります。
入居者の状況によって、自己負担額が大きく分かれるため、気になる方は直接施設に確認してみましょう。
ナーシングホームのメリットは?
ナーシングホームは、急変や不測の事態が起きた場合、医療連携が取れていると言った医療体制が整っています。
介護施設にはない充実した医療体制のあるナーシングホームのメリットをご紹介します。
介護度や医療依存度が高くても入居可能
要介護4・5など寝たきりで重度の要介護者は、他の施設では対応が難しい医療依存度の高い病状が理由で、入居を断られてしまうことも少なくありません。
ナーシングホームは、看護師が24時間常勤していることや、医師や薬剤師など地域の医療機関と連携しているため、介護施設や在宅介護では対応できない場合でも、入居の相談が可能です。
病気が悪化しても転居しなくていい
医療体制が整っていない介護施設などは、病状が悪化してしまった場合、対処することができないため、住み替えとなってしまうことも。
そうなってしまうと、受け入れてもらうための施設探しをしなければなりませんし、病状が悪化した状態では、なかなか見つからず本人だけでなく家族にとって大きな負担となってしまいます。
ナーシングホームは、医療体制が手厚く看取り対応までできる施設のため、病状が悪化しても最後まで住み慣れた場所で過ごすことができます。
ナーシングホームを必要としている人
現在ほとんどの介護施設は、入居者が急変などによって病院へ入院してしまうと、退院後は元の施設に戻ることが難しく、病状が不安定な方とその家族は、環境の変化に対応するだけで一苦労です。
ナーシングホームは、医療機関と連携していることで、退院後に住み慣れた施設に戻ることが可能なうえ、病状が以前よりも不安定となっていても、適切なケアを受けることができます。
また、他の介護施設とは違い、介護保険を持っている高齢者だけでなく、がんやALS、精神病、特定疾病など医療保険にも対応している施設があるので、介護が必要な方が幅広く利用できます。
しかし、ナーシングホームは施設によって受け入れ可能な患者が異なりますので、事前に調べておきましょう。
まとめ
ナーシングホームについて、色々とご紹介いたしました。
医療体制と介護体制が両立したナーシングホームは、有料老人ホームと同義とされていて、医療サポートの手厚さが特徴として、今後需要が高まるといわれています。
老人ホームやグループホームとは違い、要介護4・5の寝たきりの方をはじめ、他の施設では対応できない病状を受け入れてくれるので、住み慣れた地域で安心して過ごせます。
これからのナーシングホームは、超高齢化社会の日本にとって、ますます需要が増加する見込みです。
この先、高齢者の割合は上がり、医療や介護の需要の増加・病院や介護施設の人手不足によって、ひっ迫の恐れがあります。
医療的サポートと介護の一体化によって、入居者の生活を支えることができ「終の住処」として新しい生活の場となり、自分らしい最期を迎えられる場所として今後、サービスや数が充実すると期待されている、将来性のある施設です。
在宅介護や今の施設に限界を感じている人は、ぜひナーシングホームを探してみましょう。