・老人ホーム入ると認知症が悪化するって聞いたけど本当?
・家で見た方がいいのか、施設で生活する方がいいのか悩んでいる
高齢の親を持つ方からよく聞かれる悩みです。
高齢化が進み、自宅での生活が難しくなる方は増えています。自然な流れとして、身体的、精神的に衰えることは避けられません。親を心配し、施設への入所を考えている・入所させている多くの家族が悩むと思います。
そこでこの記事では、老人ホームに入ると認知症が悪化するのか・悪化する原因とその対策についてまとめました。
この記事を読むことで、親が老人ホームに入るか悩んでいる方の参考に、もう入っている方は、これからできる対策と家族にできることがわかります。大切な人が安心して暮らすために、ぜひ最後までご覧ください。
老人ホームに入ると認知症は悪化する?
老人ホームに入ること=認知症が悪化するとは限りません。
認知症は進行性の病気であり、認知機能の衰えにより、普段何気なく行なっていた生活が送れなくなる状態を言います。そのため、生活の仕方が多種多様であるように、困ることも症状もさまざまです。
普段の生活が難しくなっている時点で認知症は進んでおり、施設入所をきっかけに症状が悪化する人もいます。
反対に、施設に入ることで症状が軽くなる人もいます。本人ができないことをサポートすることで、身体的・精神的にも安定するためです。
- 薬の管理ができなくなり、施設の職員に管理してもらうことで症状が軽減した。
- 身体の感覚がわかりにくく、水分を取らず脱水症状に。時間ごとに水分摂取を促し症状が軽減した。
こういった、職員がサポートすることで症状が軽減する具体例もあります。
老人ホームで症状が悪化する人の原因
症状が悪化する原因を説明する前に、まず認知症の症状について知っておく必要があります。
認知症の症状は、大きく中核症状、周辺症状の2つに分けられます。(参考:政策レポート(認知症を理解する)-厚生労働省)
中核症状
中核症状とは、脳の細胞が壊れることで
- 記憶障害(新しいことを覚えたり、最近のことを思い出しにくい)
- 見当識障害(時間がわからない、場所がわからない、人を忘れる)
- 理解・判断力の障害(状況を理解しにくい、判断が難しい)
- 実行機能障害(スムーズに作業できない、問題解決できない)などが起こり、
目の前の状況を正しく認識できなくなることです。
周辺症状
中核症状に加え、本人がもともと持っている性格や、環境などのさまざまな要因が絡み合って、不安、うつ、興奮や暴力行為、徘徊、被害妄想などの症状が現れることです。
入所をきっかけに症状が悪化する人
認知症の方は、今の状況が正しく認識できず、よく知らない場所で、どうすることもできないと混乱しています。
それでも何とか解決しようと動くのですが、上手く解決できず自分も周囲も困ることになる。これが、入所をきっかけに症状が悪化する人の大きな理由になります。
住み慣れた場所での生活がむずかしくなり入所する方が多く、もともと認知症が進行していた可能性も高いです。
慣れた生活から、ルールも環境も違う施設に入所することで症状が急激に悪化するパターンです。
入所後に症状が早く進む人
ストレス、主体的な生活ではないこと、考える機会が減ることで症状が早く進行することがあります。
新しい環境に対応できないことで強いストレスにさらされます。生活リズムの乱れや、対人関係のトラブルなどで、周辺症状が強く現れることも。
本人を守るために行動の制限が必要となり、うつ傾向から意欲低下につながることもあります。
施設は1日の流れが決まっており、毎日同じことを繰り返す生活になりがちです。手厚いサポートで主体的に動く必要も少なくなり、できることもできなくなることがあります。役割も減り、外からの新しい刺激が少なくなることで考える機会が減ります。
新しい環境のストレス、守られる環境での単調な生活が原因と感じています。
しかし、サポートの仕方を工夫している施設も多くあります。認知症ケアを積極的に取り入れている施設を参考にしてください。(参考:認知症ケア法−厚生労働省)
認知症の対策は生活習慣のサポート・安心させること
認知症の進行を遅らせるためには、中核症状と周辺症状をなるべく起こさせないことです。
そのためには施設と連携し、家族も無理のない範囲で積極的に関わることが必要となります。
作業療法士15年の勤務経験から、認知症悪化を止める一番のポイントは、
本人が落ち着いて生活できるまでにどれだけ短い期間で環境に慣れるかになります!
落ち着くまでの期間が長くなるほど、職員もいそがしい場合が多く十分なサポートをできないことがあります。
その場合、行動を制限せざるを得ないため本人がさらに混乱し、症状を悪化させる負の連鎖につながることがよくあります。
生活習慣のサポートと安心させること
本人が混乱しないよう、睡眠や食事、トイレ、着替えなどの基本的な生活習慣を、なるべく主体的にできるようにします。
そうすることで、身体的なリスクによる進行を予防し、周辺症状の予防につながります。
レクリエーション・リハビリなどで、日中の活動性を向上させます。頭と身体を使うことで、考えて行動する力が衰えることを予防します。
また、施設内で家事などの役割を担うことも効果的です。そうすることで、職員や他の利用者とも交流することになり、人と関わることで精神的な刺激となり、心の安定にもつながります。
以上のサポートは施設の職員が担ってくれることです。家族としてできることは、基本的な生活習慣がどのくらいできているのか?必要なサポートはどのくらいなのか?日中はどう過ごしているのか、を聞いてみることをおすすめします。
話をすることで、いそがしい職員も家族に対して気にかける時間が増え、対応がよくなることがあります。
家族にできる対策の具体例
積極的に面会をする
家族が面会することで、本人に安心感を与えることができます。職員とも話すことで、本人の性格や今までしてきたことに関する情報交換ができ、対応がよくなったり、ちょうど良い具合のサポートにつながります。
部屋に本人の大切にしているもの、家にあったものを置く
部屋に本人の大切にしているもの、家にあったものを置くことで、安心できる空間を作れます。職員との会話のきっかけになることも多いのでおすすめです。
外出する、外泊する
外食に行くことや、正月などに外泊をすることで新しい刺激になります。もちろん、本人が混乱しないことが大切なので、無理に行うことはしないようにしましょう。家族との新たな関係性を作るきっかけにもなります。
定期的な外泊がきっかけで、本人に必要なサポートがわかり、自宅での生活を再開される方もいます。訪問ヘルパーや訪問介護、ショートスティを利用して自宅と施設を併用しながら生活する方もいます。
ケアマネージャーは介護保険を利用した福祉サービスを調整してくれますので、気になる方は聞いてみてください。
家族にできる対策は、施設側の協力が必要となります。コロナの自粛期間も終わり、面会、外出や外泊もしやすくなっていると思います。
施設側と連携し、本人の生活と心理的サポートをしましょう。
まとめ
老人ホームに入ることで必ず認知症が悪化することはありません。
認知症は進行性の病気であり、進行を完全に止めることはできませんが、スピードを遅らせることは可能です。ポイントは基本的な生活習慣を送ること、混乱せず安心して暮らすこと。そのためには施設側と連携してサポートする必要があります。
今回の記事を参考に、ご本人・ご家族が安心して生活できるきっかけになると幸いです。