せっかく老人ホームに入居できたけれど、最期まで生活できるのか心配になっていませんか?実際に老人ホームから退去してほしいと言われて困っている方もいるかもしれません。
終のすみかとして入居した老人ホームでも、入居した時と心身の状況が変化してしまうので、生活が続けられるのか不安になってしまう方も多いでしょう。
今回の記事では老人ホームから追い出される理由や、退去勧告を受けたらすべきこと、追い出された後の対処法について解説します。
老人ホームでの共同生活が難しくなって心配な方や、実際に退去を迫られて困っている方はこの記事をぜひ参考にしてください。
老人ホームから追い出される理由とは
老人ホームの退去要件は、契約書に記載されているので契約時に必ず確認しておくことが大切です。追い出される理由にはどのようなものがあるのでしょうか。
重度の認知症で共同生活が難しい
老人ホームから追い出される理由として考えられるのが、認知症が重度になり共同生活が難しくなってきた場合です。
在宅で対処が難しいため施設に入居している訳なので、認知症が理由で退去を迫られるのはおかしいと感じるかもしれません。しかし、他の入居者に迷惑をかけるようなことが増えれば施設としても対応が難しくなります。
他の入居者に迷惑がかかる行為は以下のような行為です。
- 暴言や暴力
- 他の入居者の物を盗む
- 他の入居者の部屋に何度も入ってしまう
- 大きな声や音を出す
特に、暴言や暴力で他の入居者を傷つけてしまう場合は、施設で生活し続けるのが難しくなります。他の入居者に被害を及ぼしてしまっては、ご利用者やご家族にも説明がつきません。
認知症の症状は介護の工夫で対応できるケースは何とかなりますが、施設のスタッフで対応できなくなってしまった場合は入居し続けるのは難しいでしょう。
医療行為が必要になった
点滴やたんの吸引、経管栄養など継続的に医療行為が必要になった方も施設に入居し続けることができません。老人ホームは医療を施す場所ではなく生活の場です。看護師の配置が無い施設や、日中だけ配置されている施設では対応が難しくなります。
医療行為が必要な場合は病院などの医療機関に入院するか、医療行為に対応できる施設への転居を検討しなくてはなりません。
利用料の滞納
利用料が払えなくなってしまった場合も、退去を迫られる理由の一つです。
1回滞納した程度ではすぐに退去とはなりませんが、滞納が続くようであれば退去勧告されてしまいます。猶予期間は施設により異なりますが、3ヶ月以上の滞納を目安にしている施設が多いようです。
猶予期間は契約書に記載されているため確認しておきましょう。
不在期間が長くなった
入院などで長期間居室を空けると退去を求められる可能性があります。長期間とは3ヶ月程度が一般的です。
入院していても、老人ホームの家賃などの月額利用料は継続して支払わなければなりません。病院と施設の支払いが二重に発生すれば、費用の負担もかさんでしまいます。入居待ちをされている方が多い施設では、待機されている方にも配慮して不在期間が長くなった方には退去を打診されるケースが考えられます。
老人ホームが経営破綻した
有料老人ホーム・グループホーム・サービス付き高齢者向け住宅などは民間が経営する施設です。民間施設は経営破綻してしまう可能性があるため注意しなければなりません。
経営破綻した場合、多くは別の運営会社に引き継がれますが、引き継がれなければ閉鎖されてしまいます。閉鎖されてしまった場合は別の施設を探さなければなりません。引き継がれた場合でも、これまでと同じサービスが受けられるかどうかはわかりません。運営方針や料金、働いているスタッフが変わってしまうことも考えられます。
入居者側の都合だけでなく、老人ホーム側の都合で入居し続けられないケースも頭に入れておきましょう。
老人ホームから退去勧告を受けたらすべきこと
老人ホームから退去勧告を受けてしまった場合、どうしたら良いか分からず困ってしまいますがすぐに出ていかなければいけないということはありません。通常であれば90日間の猶予期間が設けられているので、焦らずに行動しましょう。
契約書や重要事項説明書で退去要件を確認
退去要件については入居の契約締結時に確認しているはずです。契約書・重要事項説明書・管理規定などを確認してみましょう。書類に退去要件が明記されていたとしても、今回のケースが要件に当てはまるのか当てはあらないのかを判断するのは難しい場合もあります。疑問があれば早めに確認して説明してもらうことが大切です。
退去に納得いかない場合の相談先
施設側から説明を受けても納得いかないケースも考えられます。施設側と協議しても解決できない場合は、契約書に記載されている苦情対応窓口へ相談してみましょう。
相談窓口には、市区町村の相談窓口・国民健康保険団体連合会・運営適正委員会などがあります。公的な相談窓口では当事者では分からない状況を冷静な視点で客観的に確認してもらえます。
返還される費用について確認する
入居一時金を支払った施設で退去が決定した場合は、入居一時金が返金されるのかを確認することも大切です。
入居一時金の減価償却が終了する前に退去勧告を受けた場合、入居期間に応じて未償却分が返還されます。返還金の計算方法も契約書・重要事項説明書に記載されているのでしっかり確認しましょう。
居室の原状回復費用について確認する
老人ホームでは、通常の賃貸物件と同様、退去時に居室の原状回復が入居者負担になるケースがあります。
老人ホームの原状回復はトラブル回避のために、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従いチェックされます。入居時よりも部屋の状態が悪くなっていたとしても、経年劣化によるものの場合は利用者の費用負担になりません。通常の使い方をしていたのであれば、そのまま引き渡すことができます。
ただし、故意に汚したり損傷させたりしてしまった場合は、退去時に清掃費や修繕費などが請求されます。
次の行き先を探す
退去勧告を受け入れた場合は、次の受け入れ先を探さなければなりません。
施設を探す時はインターネットなどで検索もできますが、地域包括支援センターでの相談や、民間の紹介センターで探してもらう方法もあります。何らかの理由で老人ホームから退去勧告を受けたのであれば、他の施設でも入居の要件が合わず次の受け入れ先を見つけるのが難しいケースも考えられます。
早めに次の受け入れ先が確保できるように相談窓口を利用しながら情報収集をしましょう。受け入れ先が見つかったら施設見学を申し込み、実際の目で確認することをおすすめします。
老人ホームから追い出された場合の受け入れ先
それぞれの退去理由に応じて選択する施設が異なります。受け入れが可能な施設をよく考えて選択しましょう。
認知症介護に対応している施設を探す
認知症が原因で退去を迫られている場合は、認知症に対応している介護施設を検討することが必要です。グループホーム・特別養護老人ホーム・有料老人ホームなどが対象になります。施設選びは相性も考えられるため、他の施設に転居すれば認知症による周辺症状が緩和されうまくなじめるかもしれません。
医療体制が整っている施設を探す
医療行為が必要な場合は入院して治療をしなければなりません。治療をして症状が安定すれば、医療体制が整っている施設を探すことができます。
医療体制が整っている施設には、介護老人保健施設・介護医療院・医療体制を強化している有料老人ホームなどが該当します。
夜間も医療ケアが必要な場合は、看護師が24時間体制で常駐している施設を選ぶことが必要です。
ただし、看護師がいるからといってどのような医療行為でも対応できる訳ではありません。
医療行為の内容によっては施設によって対応できないケースがあるため確認が必要です。
また、介護老人保健施設は在宅復帰を目的とした施設であり、原則長期間入院できないことも覚えておきましょう。
費用が安い施設を探す
利用料の支払いが難しいため入居が続けられない場合は費用が安い施設に転居を考えなければなりません。費用の安い施設には特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ケアハウスなどの公的施設が該当します。
公的施設とは、国・地方自治体といった公的団体が運営している施設です。入居一時金がかからない施設や行政による公的な控除・補助制度が利用できる場合があるので、費用が安く抑えられます。
ただし、公的施設に入居するには要件に当てはまっていなければ入居ができません。例えば、特別養護老人ホームは要介護3以上の介護度が重く介護の必要性が高い方が優先的に入居できる施設です。
また、公的施設は費用が安いため人気が高く、地域によっては待機者が多くなかなか入居できない可能性があるため注意が必要です。
入院できる病院を探す
介護施設では対応できない医療行為が継続的に必要な場合は、長期にわたり医療ケアが受けられる医療機関を探す必要があります。療養病棟がある病院や、癌などの苦痛を和らげるための終末期ケアが受けられる緩和ケア病棟などが該当します。
認知症が重度になり暴言・暴力などの迷惑行為が施設のスタッフでは対応しきれない場合は、精神科の病院に入院するのも選択肢の一つです。薬物療法などで薬の調整ができ、精神的に落ち着けば再度施設で受け入れてもらえるケースもあります。
次の受け入れ先はベストな選択を
老人ホームから追い出される理由や対処法について解説しました。
老人ホームから追い出される理由はさまざまですが、退去勧告を受けた場合は契約時の内容を確認し、冷静に対応することが大切です。
退去勧告を受け入れ、退去が決まった場合はベストな受け入れ先が探せるように第三者の力を借りながら施設を探しましょう。