要介護認定の区分は変更できる?メリット・デメリットと注意点を介護認定調査員が解説

要介護認定の区分は変更できる?メリット・デメリットと注意点を介護認定調査員が解説
お母さんが転んで入院しているの。これまでデイサービスだけを使っていたけど、退院したら、そのサービスだけではやっていけないわ…
退院後はサービス量が増えてしまいそうですね。それなら、要介護度の区分変更申請をした方が良いかもしれません!
介護認定調査員
介護認定調査員

認定調査を行い要介護度が出てサービスを利用していても、怪我や入院、疾患の進行などの状況に応じて必要なサービス量が変化してしまうことは珍しいことではありません。

このように、ライフスタイルや身体の変化に応じて要介護度の区分を変更することが出来るのを知っていますか?

これを”区分変更”といいます。

今回は、介護認定調査員である筆者が、区分変更のメリット・デメリット・注意点を解説していきます!

要介護認定の「区分変更」について

区分変更ってなあに?

要介護認定は1度決まったらずっとそのまま…ではなく、心身の状態が変化したときに”区分変更申請”という手続きを行い、認定の見直しを行うことが出来ます。

この区分変更の簡単な流れとしては、まず担当のケアマネジャーを通し区分変更の申請を行い、介護認定調査員による認定調査を受けることとなります。

そうすることで、現在の心身状態を改めて調査判定してもらうことが出来るのです。

区分変更が出来るタイミングは?

区分変更が出来るのは、要介護認定を受けている方の心身の状態が”これまでと比べて明らかに変わった”と感じた時です。

たとえば、以下のようなケースの時があります。

  • 転倒して入院した後、身体機能が大きく低下してしまった
  • 認知症の進行により、日常生活に支障が出るようになってしまった
  • 疾患の悪化等で、日中ひとりで過ごすことが難しくなってしまった
  • 反対に、リハビリの効果により出来ることが増えた、など…

実際の認定調査でも、入院がきっかけで区分変更申請を行った方や認知症の大きな進行で申請に至った方が非常に多くいらっしゃいました。

ご家族様やご本人が心身状態の変化に気が付いていなくても、担当のケアマネジャーやヘルパーなど、周囲の支援者が変化を敏感に察知し区分変更申請に至るケースも多く見受けられます。

また、上記以外のタイミングでは”認定調査の結果に納得出来なかった場合”にも、区分変更申請が行われる場合があります。

この場合は、再調査を行って適切な要介護度が出るケースと、再調査を行っても要介護度が変わらないケースとありますので、申請を希望する前にまずは担当のケアマネジャーに相談すると良いでしょう。

区分変更の具体的な流れ

区分変更の手続きは基本的に「心身の状態が変わった」と感じた時に市区町村に申請することでスタートしますが、実際には本人や家族が直接申請をするのではなく、担当のケアマネジャーを通して申請が行われるのが一般的です。

大まかな流れは以下の通りです。

  1. ケアマネジャーや家族などの支援者が状態の変化に気づく
  2. 市区町村へ「区分変更申請」を提出
  3. 認定調査日の決定、介護認定調査員による認定調査が行われる
  4. 主治医の意見書が提出され、介護認定審査会にて要介護区分の方向性が話し合われる
  5. 市区町村が判定し、要介護者へ認定結果が通知される

この流れは新規の要介護認定とほぼ同じですが、新規の認定と違ってここではあくまで「要介護度の区分の変更」が目的なので、”現在の状態は前回と比べてどう変わったか”が重要なポイントとなります。

また、区分変更申請が行われてから認定結果が出るまでに要する期間は約1か月であるため、「明らかに状態が変わった」と感じたら、出来る限り早く申請を行うことが大切です。

区分変更のメリットとは?

サービスの利用枠が広がる!

区分変更によって要介護度が変わると、訪問介護やデイサービスなどの”使える介護サービスの上限額”が増えます。

つまり、ヘルパーの訪問回数やデイサービスへの通所回数を増やすことが出来るようになるので、今の状態に合わせた支援をしっかり受けられるようになるのが最大のメリットです。

また、要介護度によって保険適応でレンタルが出来る福祉用具には違いがあるため、区分が上がることでレンタルできる福祉用具の幅も広がります。

「今のままの要介護度ではサービスが足りないけど、制度上仕方がない…」と我慢していた方こそ、区分変更をきっかけに”適切な支援を受けられる安心感”が得られる可能性があるのです。

家族の介護負担が軽減される

区分変更によって受けられる介護サービスが増えると、家族が担っていた介護の一部を介護のプロに委ねることが出来るようになります。

入浴や排せつ、日用品の買い物など、身体的に大きな負担となるケアも、ヘルパーやデイサービスの回数を増やすことで家族の介護負担が軽減され、身体的・精神的な余裕が生まれます。

実際の調査でも、「週にあともう一回デイサービスに行けるようになると、すごく助かる…」とお話しされるご家族様は多くいらっしゃいました。

区分が上がることで、使えるサービス量が増えるのね!それはありがたいわ、家族だけでは介護しきれないもの。
区分変更にはメリットが多くあるので、うまく活用してくださいね。ただしデメリットもあるので、注意が必要です!
介護認定調査員
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区分変更にデメリットや注意点はある?

必ずしも「区分が上がる」とは限らない

区分変更申請をすれば、これまでよりも重い認定が出る…そんな風に思われがちですが、必ずしも「区分が上がる」とは限らないのが実情です。

「前回と比べて大きな変化がない」と判断された場合、認定区分が変わらず、据え置きになってしまう場合があります。

なかには「状態が改善された」と評価されてしまい、以前よりも認定区分が軽くなってしまうパターンも少なからずあります。

特に認定調査においては”全国統一の判定基準”に基づいて評価がされていくので、ご家族などが「前と変わった」と感じている部分が、認定調査での判定基準には該当せず、結果に反映されない場合があるのです。

このように、ご本人やご家族の”体感的な大変さ”と、判定基準による”客観的な判断”にズレが生じることもあるため、必ずしも思った通りの結果が出るとは限らないということを理解しておく必要があります。

区分変更申請後の注意点

区分変更の際も、新規申請と同様に「医師の意見書」が必要になります。

普段の診察で状態の変化がうまく伝えられていないと、意見書に「変化なし」と書かれてしまうことも。

そのため、申請時にはケアマネジャーと十分に連携し、ご本人やご家族が医師に現状をしっかりと伝えることが大切です。

また、認定調査では「以前と比べて何がどのように変化したのか」を、出来るだけ具体的に伝えましょう。

たとえば「いつごろから、何が、どのように大変になったのか」など、細かく伝えることでより正確な認定につながります。

せっかく区分変更申請をするのだから、うまく認定結果が出るようにしていきたいわね!
そうですね、区分変更申請には注意点もありますが、医師や認定調査員に現状をしっかりと伝えて、納得のいく認定結果を目指しましょうね!
介護認定調査員
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まとめ

できるだけ今の暮らしを続けていきたいという願いは、ご本人だけでなく、ご家族にとっても共通の想いではないでしょうか。

しかし、病状の進行や急な入院など、心身の状態は思いがけないタイミングで変化することがあります。

そんな時こそ、要介護認定の区分変更申請という制度を知っておくことで、必要な介護サービスを早めに受ける準備ができます。

「もしもの時」に備えるためにも、制度をうまく活用して、安心して介護を続けていける環境を整えておきましょう!

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