褥瘡(じょくそう)とは、一般的に床ずれと言われているもので、寝たきりの方が同じ体勢で寝ていることで、部分的に圧迫され続けた状態のことを言います。
発症しないようにすることが一番ですが、もしも褥瘡ができてしまった場合、適切に処置をせず、悪化させてしまうと手術する場合もあります。
では、皮膚のどういった状態が褥瘡になっているか、原因や発症しやすい部位がどこか、予防方法について解説していきます。
褥瘡(じょくそう)とは?
褥瘡とは、寝たきりの人や体に麻痺があって動けない人、長時間同じ体勢で座っていなくてはならない人が長時間同じ体勢でいることで、圧迫された部位の血流が悪くなり、酸素や栄養が行き届かなくなり、皮膚や皮下組織、筋肉などが死んでしまうことです。
正しく予防しないと、数時間で皮膚の状態が悪化してしまいます。
褥瘡の主な症状は以下の通りです。
- 発赤(ほっせき)…床と接している肌に赤みが出る初期症状。
- 水泡(すいほう)…皮膚の膜に水が溜まってしまい、水ぶくれのような状態
- びらん…皮膚の表層がはがれ落ちて下部組織が露出した状態
褥瘡は、悪化してしまうと血行悪化や皮膚の壊死を起こしてしまいます。
初期症状の時点で、適切な処置や治療を行えば治癒する可能性がありますが、気づかずに放置してしまうと、皮膚のただれや傷がどんどん悪化します。
万が一重症化してしまうと、皮膚がただれ、骨が見えてしまうくらい深い傷となってしまうため、早期発見・早期治療が必要です。
褥瘡(じょくそう)の原因は?
褥瘡の発症原因はいくつかあります。
皮膚への持続的な圧迫
布団やマットレスとの圧迫とずれによって傷ができます。
特に寝たきりの人や麻痺のある人は、寝返りがうてないため、肩や腰、踵などの身体の一部に体重がかかり続けます。
そうなると、圧迫されている部位の血流が悪くなってしまい、発疹やただれ、傷ができてしまい、褥瘡となってしまいます。
皮膚の状態が悪い
褥瘡は、汗や排泄物によって皮膚が不衛生に湿った状態が長時間続くことです。
もう一つの原因は、失禁などで長時間オムツを着用していると、湿気が多くなり皮膚がふやけ、摩擦が起きやすく、ただれたりかぶれたりして皮膚への負担が大きくなります。
皮膚が長時間湿った状態のままにならないよう、常に清潔に保ちましょう。
他にも、加齢によって肌の水分量が減少してしまうことで、摩擦による刺激への抵抗力が低下してしまい、褥瘡リスクも高くなります。
皮膚への摩擦
シーツや衣類がよれてシワになっていると、皮膚への負担になってしまいます。
高齢者の皮膚は、少しの刺激にも弱く傷つきやすいため、移乗介助やベッド上での引き上げ介助(上方移動)の時、もっとも臀部や背部はシーツや衣類の摩擦によって、皮膚の負担が大きいです。
また、高齢者は肌の水分量が減少することで、乾燥しやすく摩擦による刺激への抵抗力が低下してしまうので、リスクが高くなります。
栄養不足
寝たきりの方は、身体機能の低下によって食事や水分補給が困難になり、血液内の栄養や酸素が皮膚に行き渡らなくなり、やがて低栄養状態となってしまい、体重減少や筋肉量、脂肪量が減少してしまいます。
次第に骨の突出が目立つようになり、その部分の皮膚に褥瘡が生じてしまう原因になります。
全身のむくみ
低栄養状態となると、身体の循環が悪くなり、全身にむくみが生じてしまいます。
むくみとは、皮膚の真下にある皮下組織に水が溜まった状態になるため、皮膚が傷ついて褥瘡が生じるリスクも上がってしまいます。
また、脳梗塞や脳出血によって身体に麻痺がある方は、血液の循環が悪くなり、手足がむくみやすくなります。
ベッドや布団で休まれる場合は、浮腫んでいる方をクッションや毛布などで足を上げ、循環をよくさせておくといいですよ。
褥瘡(じょくそう)になりやすい部位と症状は?
褥瘡は、持続的に圧力のかかりやすい部位は、体重のかかる骨の出っ張ったところで、脂肪や筋肉の薄いところに発症しやすいです。
一番起きやすい場所は、腰の仙骨部や大転子で、その次が足の踵、肩甲骨や肘関節などです。
1日のほとんどを車椅子などに座りっぱなしの場合、お尻の坐骨部にできたり、頭のとくに後頭部や耳にできることもあります。
特に寝たきりの方は、仰向けの状態と横向きの状態で圧力がかかりやすい部位が異なります。
褥瘡ができやすい部位について、もう少し詳しく解説していきます。
仙骨部
仙骨部は、褥瘡にもっとも発症しやすい箇所です。
具体的には、「お尻の中心」と言われていて、仰向けの場合、体重の40%以上が仙骨部にかかるといわれています。
肩甲骨部(けんこうこつぶ)
肩甲骨は、背中の上の方にある逆三角形の平らな骨のことです。
仰向けで寝た際、仙骨部と同じ体重がかかりやすいので、寝返りなどで体の向き変えることで予防はできますが、寝たきりの方はご自身で身体の向きを変えられないため、気をつけましょう。
大転子部(だんてんしぶ)
大転子は、足と腰の付け根の位置にあります。
横向きに体重がかかりやすくなり、寝返りができず同じ姿勢でいると褥瘡になりやすくなっています。
踵骨部(しょうこつぶ)
踵骨部はかかとのことです。
仰向けの状態で長時間いると、体重がかかりやすく、仙骨部や大転子部ばかり注意していると、気付いたらかかとまで褥瘡になってしまいます。
その他の部位
上記にあげた褥瘡になりやすい部位の他にも、仰向けの場合は後頭部や肘関節部、横向きの場合は耳やくるぶしなど、皮膚と地面が接しやすい箇所が褥瘡になりやすいです。
褥瘡(じょくそう)の見分け方とケアは?
褥瘡は、突然できるわけではなく、ステージ1と言われる軽症の段階からステージ2〜4の中等症以上と徐々に悪化していきます。
では、ステージ1〜4まで皮膚がどのように悪化してしまうのかを解説します。
ステージ1
まず圧迫された箇所に、肌に赤みができる発赤(ほっせき)や皮内出血などがみられます。
皮膚の赤くなった部分を指で押してみて、そこが白くならずに赤いままであれば、褥瘡の軽度です。
赤くなっている部分はこすらず、決して触らないように気をつけましょう。
軽度の褥瘡のケアとして、毎日患部を洗浄し、清潔した後保湿剤を塗布することで、清潔で潤った皮膚状態を保つことができます。
また、長時間同じ体勢でいることを避けるために、こまめな体位変換をすることで、圧を逃したり、患部の周囲を温めたタオルで蒸し、血行を促進する方法もあります。
他にも、患部を摩擦などの刺激で悪化させないよう、フィルムを貼ることも有効です。
ステージ2〜4
軽度から中度症の場合の皮膚は、褥瘡が悪化していて、壊死状態や感染を伴っています。
中等症以上の褥瘡は軽症と同じように、皮膚状態を清潔に保ち、適切な薬剤を使用し、医師や看護師に処置してもらう必要があります。
また、患部が膿んでいるなど、感染している場合は抗生剤を使用したり、医師がメスを使用して行うデブリードマンという壊死組織を取り除く処置が行われます。
褥瘡の予防方法は?
褥瘡は一度発症してしまうと治らないため、適切な予防策が必要となり、正しい予防法を知っておくと、発症や悪化を防ぐ可能性が高まります。
毎日の観察を欠かさない
褥瘡の発症を防ぐには、皮膚の状態を毎日観察することで、早期発見にもつながります。
オムツの交換時や入浴時など、毎日必ず行う介助中に皮膚の状態に変化がないかを知ることができます。
万が一、疑わしい症状がみられたとき、主治医や看護師にみてもらいましょう
- 皮膚が赤くなっていて、指で押しても赤みが引かない
- 水ぶくれができている
- ただれている
- 滲出液(しんしゅつえき)が見られる
- 皮膚が熱を持っている
主治医や看護師に相談する
「いつもとなんとなく違う」「こんなところに赤みあった?」と、家族が皮膚トラブルを発見することが多いです。
異変や違和感を感じたら、主治医や訪問看護師などに相談すると、早期発見につながり早めに対処することで、重症化の進行を遅らせることも可能です。
体圧分散寝具を使う
寝たきりの方が褥瘡になってしまう原因の一つである、ベッドのマットレスなどを体圧分散寝具に利用することで、体重が分散され褥瘡予防になります。
褥瘡を予防する福祉用具は他にも、エアマットやウォーターマットレスなどもあり、介護保険でレンタルできます。
他にも、一日中車椅子で座っている方は、車椅子専用の体圧分散クッションもあります。
利用を検討される場合は、担当のケアマネージャーや医師、看護師に相談できます。
皮膚の清潔を保つ
褥瘡は、汗や排泄物などが付着したままの状態でいると、ただれやかぶれの原因となり、皮膚の状態が悪化してしまいます。
予防には、1日1回は洗浄し水分を拭き取り、保湿剤を塗布することで、清潔に保たれ乾燥を防げるので、常に皮膚を清潔に保てるようにしておきましょう。
栄養を摂る
寝たきりの方は、食事量が少なくなってしまうことで、低栄養となってしまい褥瘡ができやすくなります。
少しでも栄養を摂ってもらうために、口内を清潔に保ち、食事は食べやすくしたり、水分補給時はトロミを付けるなどの工夫や環境を整えましょう。
食事量を増やすことが難しい場合は、栄養補助食品の少しの量でもカロリーが高く摂れる物もありますのでおすすめです。
注意:糖尿病などの疾患で食事制限がある方は、必ず主治医や看護師に相談しましょう。
まとめ
今回は褥瘡を発症しやすい部位と原因、見分け方と予防法についてご紹介しました。
褥瘡は一度なると完治せず、正しい予防や処置をせず放置してしまうと、傷口が広がり膿んでいると感染症や壊死状態になってしまいます。
また、皮膚の状態だけでなく体調が悪化したり、食事が摂れなくないことでの低栄養も原因のため、寝たきりの方やほぼ一日車椅子に座って過ごされている方は、十分気を付けなければなりません。
万が一、皮膚に異常があった時は、すぐに主治医と看護師に相談をしましょう。