猛暑日が続いた夏も終わり、朝夕と日中の寒暖差が広がり、日に日に寒さが厳しくなってくるこの時期は、感染症や自宅内での事故が増えるため、高齢者の健康にさまざまな影響を与えます。
また、暖かい場所から寒い場所へと移動することが多くなることで、身体への負担も多くなることで、心臓に負担がかかるヒートショックを起こす可能性もでてきます。
冬の冷え込みや乾燥によって、たくさんの危険が潜む季節であり、血流が悪くなりやすい高齢者にとって、冬の寒さ対策を行うことは重要なことです。
ここでは、冬に起こりやすい高齢者の事故やトラブル、寒さ対策や予防についてご紹介します。
冬の寒さは高齢者の体にどんな影響を与える?
冬の寒さや乾燥が厳しくなるのは、12月〜2月の間で、高齢者の身体に悪影響を及ぼします。
朝夕と日中の温度差が激しい寒暖差によって、体に負担がかかることでストレスとなってしまったり、寒いと体温が下がることで体の抵抗力も低下してしまい、体調を崩しやすく重症化につながる恐れがあります。
特に気をつけなければならないのが、インフルエンザや新型コロナウイルス、ノロウイルスによる「感染症」、空気の乾燥による「皮膚トラブル」、寒暖差による「血圧の変動」、急激な気温の変化による「ヒートショック」です。
では、高齢者の身体に大きな影響を与える健康リスクについて、詳しく解説していきます。
冬に流行る感染症とは?
冬になると湿度が減り乾燥によって、ウイルスが空気中に増加します。
主な感染ルートは、人が触ったものを介して感染する接触感染、くしゃみや咳などによる飛沫感染、食事によって起こる経口感染です。
冬の時期に流行る感染症について説明します。
インフルエンザ
インフルエンザは、毎年11月〜3月頃がピークとなり、A型とB型の2種類あります。
その年によって流行するインフルエンザの種類が異なるので、予防接種しても別の型でかかる場合もあるため、注意が必要です。
症状としては、38℃以上の発熱、頭痛、筋肉痛、全身の倦怠感が表れるのが特徴ですが、一般的な風邪と違い、鼻詰まりや咳などの症状はありません。
感染性胃腸炎(ノロウイルス)
ノロウイルスは、主に牡蠣などの二枚貝に含まれる細菌によるもので、調理時の加熱や生のまま触れた手や食器の消毒が不十分などが原因で発症します。
ノロウイルスにかかると、激しい嘔吐や下痢が伴うため、体力的にも大きなダメージとなるうえに、感染力が非常に強いため、嘔吐物や便を媒介に二次感染する危険性もあります。
症状の持続する期間は短いので、その間に脱水にならないように、できる限り水分補給をすることがとても大切です。
ノロウイルスは、わずかな量が体の中に入っただけでも、容易に感染してしまうため、嘔吐物などを処理する際、吸い込むと飛沫感染する恐れがあるので、マスク・手袋をしっかりと着用し、メガネかゴーグルも目を守るためにおすすめです。
雑巾・タオル等でしっかり拭き取り、ビニール袋に入れて密封し捨て、汚れた衣類はマスクと手袋をした上でバケツやたらいなどで水洗いし、塩素系消毒剤で消毒をしましょう。
汚れたまま洗濯機で洗うと、洗濯機がノロウイルスで汚染され、他の衣類にもウイルスが付着してしまいます。
少しでも汚染したところがあれば、塩素系消毒剤ですべて消毒してください。
自宅で発生し、衣類や嘔吐物を洗い流した場所の消毒をする時に、塩素系消毒剤が無い場合は、次亜塩素系消毒剤(家庭漂白剤)を使用してください。
RSウイルス感染症
RSウイルスによる感染症は、主に3歳未満の乳幼児が発症する病気で、成人ではほとんどかかりませんが、加齢などによって免疫力が低下している高齢者が感染する可能性があります。
インフルエンザと同様に空気感染で、症状として、咳や鼻水など呼吸器症状を引き起こします。
溶連菌感染症
溶連菌感染症とは、溶解性連鎖球菌と呼ばれ、空気感染によって引き起こされ、喉が赤くなり腫れる急性咽頭炎となります。
RSウイルスと同じ、免疫力が低い子どもに多く見られる感染症ですが、成人が感染する恐れもあります。
ウイルス生の病気と異なり自然治癒が見込めないため、抗生物質による治療が必要です。
新型コロナウイルス
新型コロナウイルスは、高齢者の免疫力低下によって感染症にかかりやすく、重篤化すると命に関わることにもなりますので、十分な感染予防の必要があるといえます。
初期症状としては、一般の風邪やインフルエンザと似ていて、38℃以上の高熱が出るのが特徴で、他にも咳や頭痛、発熱、倦怠感などが生じます。
新型コロナウイルスへの感染予防対策は、以前よりも緩和されてきてますが、感染しないためにも、こまめな手洗いやアルコールでの手指消毒を心がけましょう。
他にも、冬の寒さで室内の換気が不十分だったり、人の多い密集している場所を避けるなどの対策も必要です。
冬場に増加するヒートショック
ヒートショックとは、急激な気温差によって血圧や脈拍が変動し、心臓に負担がかかり心筋梗塞や脳梗塞、めまいといった健康被害を引き起こす現象です。
高血圧や動脈硬化を患っている人ほどリスクが高く、高齢者の死因の4分の1がヒートショックによるものと言われています。
暖かい部屋から暖房設備の無い脱衣所へ移動することで、寒さを感じ熱を逃さないよう血管が縮まり、皮膚の下に流れる血流量を調整することで、血流が悪くなり血圧が急上昇します。
また、浴室で浴槽に浸かることで血管が拡張し、血圧が急降下し、血圧が大幅に変動することで、ヒートショックとなってしまいます。
ヒートショックを防ぐには、部屋ごとの温度差を極力なくすことです。
トイレや脱衣所に暖房機器を置いたり、入浴の際は水分補給をし、長湯しないようにしましょう。
脱水
脱水とは、体に必要な水分やミネラルが不足した状態で、命に関わる危険な状態になることです。
夏と比べて冬は汗をかきませんが、排泄や呼吸、皮膚から体内の水分が減り、気づかない内に脱水症状となってしまいます。
高齢者は特に、喉の乾きを自覚しにくいため、ほとんど水分を摂らなくなり、脱水のリスクが高くなります。
また、乾燥した環境では皮膚や粘膜、通常の呼吸から水分が失われてるため、高齢者の脱水症状に注意が必要です。
食事の時や起床時、入浴前後、就寝前など水分を飲むタイミングを決めておきましょう。
皮膚の乾燥
高齢者は、さまざまな皮膚トラブルが起こりやすく、特に冬に乾燥により多く見られる「老人性乾皮症」は肌がかさつき粉をふいたような状態や「皮膚掻痒症」などの皮膚疾患は、かゆみから皮膚をかいて炎症を起こすと、新たな湿疹や細菌感染となってしまいます。
加齢とともに皮脂分泌が少なくなり、外部の刺激から肌を守る皮膚の防御機能が低下してしまい、特に入浴後は体の水分が蒸発するため、乾燥がひどくなります。
皮膚の乾燥を予防するためには、入浴時に熱すぎるお湯や洗浄力の強い石けん類、ナイロンタオルで強く擦ることは避けましょう。
入浴後に保湿クリームを塗り、衣類は肌触りの良いものを選び、皮膚に負担をかけないようにします。
寒い冬を安全に過ごすためにすることは?
寒い時期の健康リスクから高齢者が安全に過ごすため、どういった対策を取ればいいのかポイントがあります。
1.部屋の湿度を保つ
空気が乾燥する冬は、ウイルスが浮遊しやすくなるだけでなく、喉や鼻の粘膜の防御機能が低下してしまうので、湿度を50〜60%に保つことで感染症や肌トラブルの予防につながります。
部屋によって、暖房器具を使用している部屋で長時間過ごす時は、加湿が大切です。
加湿器を使用したり、洗濯物を室内干しにすることで、加湿することができます。
扇風機などで風を当てると、乾燥が早く部屋干しによる臭いを軽減する効果や、空気が循環するので、冷えやすい足元の空気も暖かくなります。
気を付けることは、湿度が高くなりすぎるとカビが発生してしまう恐れがありますので、湿度計で適度な湿度を保ちましょう。
2.マスクを着用しこまめにうがい手洗いをする
インフルエンザや新型コロナウイルスと感染症リスクが高くなるため、手洗いやうがい、アルコールで手指消毒を心がけましょう。
外出後やトイレの後、食事の前にも手洗いをすることで、インフルエンザ・ノロウイルスの予防にもなります。
マスクの着用は他者へ感染を広げないだけでなく、喉の保湿効果もあります。
高齢者の方に多く見られるのは、使い捨てマスクをもったいないからと同じマスクを何日も使っていますが、衛生上よろしくないので1日使ったマスクは捨て、新しいのを使いましょう。
3.適度な運動
寒さが厳しくなると外へ出ることが減ってしまい、体を動かすことが減ってしまいます。
運動をすることで血流を促進させ、筋肉量を増やすことができ、感染症や冷えによる体調不良を防ぐために、日頃から出来るだけ体を動かすことが大切です。
天候が悪く外に出れない時は、室内でできる簡単なストレッチとして、腕や肩、足首を回すだけでも効果があり、寒さによる関節の痛みの予防・改善にもなりおすすめです。
4.水分補給とタンパク質を摂取
のどが乾きやすい夏と違い、冬は水分をあまり摂らなくなります。
空気が乾燥しているうえに、暖房器具を使っている部屋で長時間過ごすことで、脱水症状を起こしてしまいます。
脱水は脳梗塞や心筋梗塞の引き金にもなり得るため、特に注意が必要です。
高齢者はのどの乾きを感じにくいので、コップ1杯程度の水分を摂ることを意識するようにしましょう。
また、冷たい水で飲むことに抵抗があれば、白湯で飲むと体も温まりますのでおすすめです。
タンパク質は免疫力の低下を防ぎ、低栄養の予防にもなります。
他にも、タンパク質を適度に摂取することで、肌トラブル改善にも効果があるといわれます。
まとめ
寒さが厳しい冬は、ヒートショックや乾燥など、高齢者にとって健康リスクが高くなり、自宅内で起こりやすいため、日頃から部屋ごとの温度差をなくしたり、適度な運動をすることが大切です。
また、高齢者にとって厳しい寒さは身体への負担は大きく、体調不良につながり脱水症状や感染症は重症化すると命に関わることになりますので、少しでも体調に変化があれば早めに医療機関に相談しましょう。