高齢者の移動をサポートする介護用品である「歩行器」は、脚の痛みなどで自力での歩行が困難となった方の介助用・リハビリ用として使われます。
介護現場やリハビリで使われることが多く、加齢や病気によって下半身が弱くなってしまい、寝たきり状態とならないよう、高齢者が自分の力で歩くための福祉用具です。
ここでは、歩行器の種類や選び方・メリット・デメリットについてご紹介します。
歩行器を使おうか悩まれている方・家族で歩行器を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
歩行器とは?
歩行器は、足腰への負担を軽減してくれる歩行の補助をしてくれる福祉用具で、介護保険を利用してレンタルもできます。
1本の細長い足で体を支えながら歩行を補助する杖とは違い、使い勝手が良く、頑丈な形状となっているため、立った状態での移動をサポートしてくれます。
歩行車とは?
歩行車とは、足腰や股関節に痛みがあったり、筋力やバランス感覚が低下した方など、立つことや歩行が難しくなってきている方が使用する福祉用具です。
歩行車には車輪が付いているので、腕の力が弱く歩行器を持ち上げることが難しい方でも安心して使用できます。
歩行器の種類と特徴は?
歩行器は、「四脚歩行器」とも呼ばれている脚が4つ付いている形状で、身体の前面と側面を「コ」の字型に囲むフレーム構造となっています。
脚の形状と移動時における動作の差から下記の4種類に分けられます。
- 固定式
- 交互型
- モーター付き
- キャスター付き
固定型(持ち上げ式・ピックアップ式)
固定型の歩行器は、フレームが固定されるよう四脚歩行器の脚に滑り止めのゴムキャップが装着された歩行器のことで、最もスタンダードなタイプです。
専門職の間では、「ピックアップ型歩行器」とも呼ばれています。
体の前面と側面をコの字で囲むようなフレームになっていて、両手でハンドグリップを掴んで身体を支えることができます。
「歩行器を持ち上げて、両脇のグリップを握って体重を支え、歩行器の場所まで歩く」という動作を繰り返して進むため、上半身の筋力が必要となります。
ただ、ピックアップ型歩行器は、歩行スピードが遅いため、外出時の使用には向きません。
ピックアップ型歩行器は、以下の人たちの使用に向いています。
- 上半身の筋力がある人
- 下半身に痛みがあり、歩行力が弱っている人
- 杖の補助では心もとない人
交互型
見た目も固定型歩行器とほぼ同じで、身体の前面で左右のフレームを手を振るよう、交互に動かして前に進みます。
交互型の歩行器は、固定型の歩行器と違いバランス感覚が必要となるため、左右どちらかの足が常に地面に接していると安定性が高くなります。
交互型歩行器は、以下の人に向いています。
- 片足に痛みがある人
- 筋力だけでは姿勢のバランスが取りにくい人
- バランス感覚がある人
- 歩行手順を理解できる人
キャスター付き
四脚歩行器の足先に前輪付きの2輪タイプと前輪・後輪付いている4輪があり、持ち上げず移動や方向転換に必要な上半身の力を軽減し、前へ進むことができます。
ただ、歩行器自体が軽い力で使用できるため、前に進みすぎるとバランスを崩しやすいため注意が必要です。
他に、2輪と4輪どちらも後ろ側に体重をかけると、ストッパーが作動するようにもなっています。
また、ハンドルは胸くらいの高さにあり、胸部の台に肘が置ける「サークル型」や、荷物入れが付いている「シルバーカー」もあります。
サークル型は2種類あり、アーム付き四輪歩行車と言って腕や肘を乗せて、体重をかけて使うことができます。
もう一つは四輪歩行車と言って、四輪とブレーキが付いて幅も広く、体重をかけて使うことができ、腰かけることもできます。
また、シルバーカーには3種類あり、軽量でコンパクトなタイプや適度な収容量と安定感のあるミドルタイプ、安定感があり座面も広く腰掛けることもできるボックスタイプがあります。
キャスター付き歩行器の使用に向いているのは、以下の方です。
- 筋力が弱まっている
- 足腰に痛みを感じる人
- リハビリ初期の人
- バランス感覚がある人
モーター付き歩行器
モーター付き歩行器は、モーターやセンサーが内蔵されている車輪付きの歩行器です。
傾斜を上る時にセンサーによって、モーターが前進を補助し、下り坂や速度超過が起こる場合は、自動でブレーキ機能が作動して使用者の転倒防止になります。
特徴は、屋外で利用できるようになっていて、通常の歩行器よりも頑丈に作られているので、折り畳み機能や荷物入れが付いている荷物入れにも対応します。
モーター付き歩行器を使用するのに向いているのは、以下の方です。
- 屋外で長時間移動する人
- 操作方法を理解できる人
歩行器の選び方
歩行器を選ぶ際、シルバーカーのように荷物が入れられたり、モーター付きの歩行器などと言った歩行器がいろいろとあるため、悩んでしまいますね。
色んな種類がある歩行器はタイプによって、特徴や用途が違いますので、ご自身の生活スタイルや体に合った歩行器の正しい選び方について、参考にしてみてください。
安定性
まず、一つめは安定性が高いものを選びましょう。
介護用品に詳しい福祉用具専門相談員と相談し、話し合いながらご自身に合ったものを選びましょう。
例えば、グリップを持って体重をかけた時、ご自身の足腰がしっかりと安定できるものであれば、安心して使用できます。
他にも、キャスター付きのものを使う時は、緩やかな傾斜である道で速度が出ないよう、しっかりブレーキを握れるものを選ぶといいですよ。
使う場所
歩行器を選ぶポイントの一つとして、使用する場所によってもタイプが変わってきます。
例えば屋内で利用する場合は、敷居の段差でバランスを崩す恐れがあり、カーペット・家具などの障害物に引っ掛かってしまう恐れがありますので、キャスター付きは危険です。
また、屋外で使用する場合は、傾斜などでスピードが出過ぎないようにするために、ハンドブレーキ付きのものや荷物を置けるタイプのものが合っています。
利用する方の身長や体力
歩行器の特徴として、利用する方の身長に合ったグリップの高さに調整ができたり、手首や腕に痛みがなく、歩行器をしっかり持ち上げて動かすことができるか、ハンドブレーキの操作ができるのかということも確認することが大切です。
利用者によっては、腰の曲がり具合や歩行レベルで適した歩行器が違ってきます。
他にも、体重をかけた時にしっかりと安定しているものを選ばないと、足に負担がかかることで、足を痛めたり転倒リスクが高くなってしまいます。
身長や体力を考慮した上で、歩行器を選ぶことはとても難しいので、福祉用具専門相談員に相談しましょう。
利便性
歩行器選びには、以下の利便性のある機能があります。
- サイズ調整機能がある
- 折り畳める
- モーターやセンサーが付いている
- 荷物を入れられる
- 座れる
状況に合った機能を比較し、ご自身に合った歩行器を選ぶことも大切です。
歩行器を使うメリット
歩行器を使うことを考えているが、メリットがあるのか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、歩行器を使う際のメリットをご紹介します。
安定して歩行できる
1つは歩行器を使うことで、安定した歩行が可能となります。
高齢者は足腰の力が弱まりやすく、歩行する時、ふらついてしまうことも少なくありません。
歩行器を使うことで、体重を歩行器に預けることで安定した姿勢での歩行ができます。
足にかかる負担を減らせる
歩行器には、グリップがついているので、手で掴みながら体重を預けて使用するので、足への負担を減らせます。
足にかかる体重を減らすことで、足腰が弱い方でも歩行しやすくなります。
行動範囲が広がる
加齢に伴ったり、なんらかの症状によって足の筋肉が弱まっていることによって、うまく歩くことができず、自宅内の歩行だけで精一杯になってしまいます。
歩行器を使うことで、足への負担が抑えられながら歩くことができ、外出する機会も増えるので、健康にもつながります。
介護保険が利用できる
要介護認定を受けている方は、介護保険を利用し福祉用具貸与サービスで歩行器をレンタルすることも可能です。
介護保険でレンタルすることで、お手頃価格で歩行器が使えます。
また、介護保険での自己負担額が異なり、所得によって負担割合の1〜3割で借りることができるため、経済的負担が抑えられたり、お試しで使用後に購入する方もいらっしゃいます。
歩行器を使用するデメリット
歩行をサポートしてくれる歩行器ですが、間違った歩行器を選んでしまうと逆効果につながってしまうというデメリットもあります。
体に合わないものを使う
歩行器は、合わない歩行器を使用することで、かえって体への負担が増え、悪化する場合もあります。
自身の身長に合っていない歩行器を使うことで腰を痛めたり、腕や手首の関節を痛めている方が、持ち上げるタイプの歩行器を使用することで、さらに負担がかかってしまいます。
また、正しい操作ができなければ転倒リスクも高まってしまうので、身体状況に合った歩行器を選ぶことが大切です。
自分好みでないもの
歩行器=高齢者というイメージや見た目が強いため、歩行器に対して抵抗もあり、使いたくないとストレスを感じる方もいらっしゃいます。
こう言った理由で、行動範囲が狭まってしまうこともあります。
歩行器によっては、機能性だけでなくデザイン性も高くなっていて、性別関係なく利用できるものも増えてきています。
まとめ
歩行器はさまざまな種類があり、体力の低下によって自宅にこもってしまう高齢者の方にとっては、外出するためのきっかけとなる福祉用具です。
最近では、デザインも豊富で歩行器に抵抗のある方でも、手に取りやすいものも増えてきています。
ここで紹介した歩行器を参考に、安全に快適な生活となるよう少しでも気になられた方は、担当のケアマネージャーさんに相談したり、介護用品を扱っているショップなどでカタログを見ることから始めてみてはいかがでしょうか。
この他にも、介護保険でレンタルできる福祉用具をこちらの記事でまとめていますので、
参考にしてくださいね。